BOOK:79 りある

□★バイバイ片想い
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「……あ、でもダメだ」

笑顔を返してから、今日はドラマの共演者の人たちとご飯に行く約束をしていたんだって思い出して。

「ん?」
「今日は、共演者の人とごはんなの」

言うと、たちまち曇る表情に、胸がキュって痛くなる。

きっと、涼介は僕のこと好きだと思う。
だけどそれは、親友としてかな。
相棒として?
…それとも……。

なんて。
そんなことを考えるのはやめよう。


「…あぁ、そうなんだ。」
あまりにしょんぼりした顔をされたもんだから。
「涼介も行く?」って返したけど苦笑して首を振るだけ。

「…ん、いや。いいや。」ってポンポンと肩を叩かれて。
離れた温もりに、胸が痛むのと同時に少しだけホッとしてしまう。

いつからだったか、二人で居ると少しだけ息がしずらくなった。
ご飯に誘われるたび、声をかけられるたび、あの“約束”が果たされる日が来たんじゃないかって期待して。

だけど、いつもそんなことなくて。
僕らはご飯の前も後も親友で、相棒で、メンバーで。
それ以上でも、それ以下でもないままで。

僕の方は、2人っきりの短い時間でも思いが膨らむばかりなのに。

もし僕が、その背中を追いかけて、気持を伝えたらどうなるだろう。

実際、あの時は、あんまり遅くなるなら僕から行くって思ったけど。
涼介に待っててって言われたら、僕には“待ってる”以外の選択肢はない気がするんだ。

いつか…。
想いが届かあかったとしても、言えればいいなって思う。
「あの約束、本当に嬉しかったんだよ」
って。











それからしばらく。
新しいドラマの撮影が始まった。
そこでは、人見知りの僕もうまくやれていて、涼介の方も映画の撮影があったもんだから、ここ最近では涼介とごはんに行くことは随分と減ってしまった。

相変わらず連絡は取るけれど。
僕もいくつか演技の仕事が重なっていて忙しくって。

こうやって距離を置いていると、少し気持ちが落ち着く…というか、冷静になる気がする。

僕はもうすぐ20歳になるわけだし。
お酒とかを飲みに行くことも増えるだろう。

そしたら、やっぱり涼介以外の人とご飯行くことも増えたりして?

今、現場の人とご飯してるように、それも楽しめるようになるかもしれない。
僕の中でもあの約束は少しずつ消えて行くんじゃないかって。

そう思ったら、なぜか分からないけど。
少しだけ、涙がこぼれそうになった。






……そんな中、久々に涼介と会うことになった雑誌撮影。
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