BOOK:79 りある
□★僕のお気に入り
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そんなわけない。
ありえない。
絶対に無理に決まってる。
僕には似つかわしくない言葉を並べたのは。
傷つきたくない…って。
やっぱり僕らしくない弱気な想いからだ。
2/14。バレンタインの日に、僕はやまちゃんと手を繋いで家に帰った。
それは、いろんなアクシデントとか、やまちゃんのいつもと違う気分が原因だったんだけど、それでも、ずっとやまちゃんに想いを寄せていた僕からしたら、夢のようなひと時で。
しかも、僕の家に来たやまちゃんは、眠る時、ギュって抱きしめて僕のおでこにキスをくれたんだ。
きっと寝ぼけていたんだろうけど、僕からしたら一生の思い出だ。
…それから。
なんだか、やまちゃんの態度が今まで以上に甘くなった気がする。
でも、都合のいいように考えちゃいけない。
やまちゃんが僕に甘いのなんて、今に始まったことじゃないし。
そんなこと有り得ない。
ムリに決まってるって、言い聞かせる。
だってやまちゃんは、
いつも好きな女の子のタイプとか、
女の子の仕草とか、
女の子にモテたいって話を嬉々としてしているから。
いくらチビとはいえ、男である僕を恋愛対象にするわけないもん。
…とはいえ、今日も。
メンバー全員が揃う現場
「知念、おいで。」
当たり前のように僕を隣に呼び寄せる。
ピタって隣に座って。
今までなら嬉しいだけだった距離感も、その優しい表情も。
今はなんだか切なく感じる。
…こんなの、勘違いしちゃうのに。
「…やまちゃん、あのさ」
「ん?」
こういうの、やめようよって言おうとしたのに。あまーい雰囲気に、どう言葉を繋げていいのかわからなくって、ドギマギして。
結局、僕は。
「なんでもない!あ、雄也〜!!」
逃げるようにやまちゃんの側を離れる。
これ以上、隣にいたら、きっと、気持ちが溢れ出してしまうから。
だから。わざとその顔を見ないようにするようにするのだった。