BOOK:79 りある

□★僕のお気に入り
2ページ/7ページ




そんなわけない。
ありえない。
絶対に無理に決まってる。



僕には似つかわしくない言葉を並べたのは。

傷つきたくない…って。
やっぱり僕らしくない弱気な想いからだ。








2/14。バレンタインの日に、僕はやまちゃんと手を繋いで家に帰った。

それは、いろんなアクシデントとか、やまちゃんのいつもと違う気分が原因だったんだけど、それでも、ずっとやまちゃんに想いを寄せていた僕からしたら、夢のようなひと時で。

しかも、僕の家に来たやまちゃんは、眠る時、ギュって抱きしめて僕のおでこにキスをくれたんだ。

きっと寝ぼけていたんだろうけど、僕からしたら一生の思い出だ。







…それから。

なんだか、やまちゃんの態度が今まで以上に甘くなった気がする。

でも、都合のいいように考えちゃいけない。

やまちゃんが僕に甘いのなんて、今に始まったことじゃないし。
そんなこと有り得ない。
ムリに決まってるって、言い聞かせる。



だってやまちゃんは、
いつも好きな女の子のタイプとか、
女の子の仕草とか、
女の子にモテたいって話を嬉々としてしているから。

いくらチビとはいえ、男である僕を恋愛対象にするわけないもん。









…とはいえ、今日も。

メンバー全員が揃う現場

「知念、おいで。」

当たり前のように僕を隣に呼び寄せる。

ピタって隣に座って。
今までなら嬉しいだけだった距離感も、その優しい表情も。

今はなんだか切なく感じる。


…こんなの、勘違いしちゃうのに。



「…やまちゃん、あのさ」

「ん?」

こういうの、やめようよって言おうとしたのに。あまーい雰囲気に、どう言葉を繋げていいのかわからなくって、ドギマギして。

結局、僕は。

「なんでもない!あ、雄也〜!!」

逃げるようにやまちゃんの側を離れる。

これ以上、隣にいたら、きっと、気持ちが溢れ出してしまうから。



だから。わざとその顔を見ないようにするようにするのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ