BOOK:79 ぱろでぃ
□A只今、天使研修中 番外編集
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天使の親友@ yt side
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「……なんだろうな、あれ」「……うん」
俺と大ちゃんが……どう表現していいものかわからない。
……なんというか。
とにかく、小っ恥ずかしい気持ちで視線を向けているのは
「おいしそうー」「ふふ、いくらでも作ってやるからな」
イチャつく一組のカップル。
……あ、違う。カップルではないのか。
正確には、今週の頭が初対面の同僚。
……いや、本当の本当に正確には、知念にとっては、もうちょっと前から知り合いで、でもやまは、記憶をなくしてるから、やっぱり今週頭が初対面で…。
まぁ、つまりは、知念とやまが視線の先にいる。
知念が無事、人間に戻ったのが先月の頭。
そして今月の頭、俺と知念はプロジェクトメンバーとして、やまや大ちゃんのいる会社に派遣されることになったんだけど。
あろうことか、知念の研修担当はやまで。
知念は、自分の記憶が消えているからか、どこか不安げだったけど、知念が入ってきた瞬間から、そんなこと心配する必要ないほどのやまのデレッデレぶり。
研修担当という地位を振りかざして、周りの人を一切、知念に近づけないし、俺にまで「ちょっと近くね?」って苦言を呈してきたんだから。その惚れ込みようは天使研修中以上だ。
そして今日。
若手で飲みに行こう!って大ちゃんの号令のもと、メンバーが集められた。
一次会は結構大人数だったんだけど、ずっと知念の隣をキープしていたやまが、あまりに牽制の目を周囲に向けるもんだから二次会は結局、この4人で山田家開催になってしまった。
まぁ、実際、仕事を進める中心メンバーもこの4人だから。
他の人とのコミュニケーションが多少取れてなくても、問題ないかなぁ、とか思うんだけど。
飲み会中、誰かが知念に話しかけるたびに「どういう話?」ってやまの検閲が入るのは、流石にどうかと思った。
絶対王政がすぎるだろう。過去の独裁者たちもびっくりの恐怖政治だ。
「ねー、ゆーてぃー」
そんな恐怖政治飲み会のことを思い出して、軽い寒気を覚えていれば知念が、タタタッとこっちにやってきて、当然のように俺の膝に乗った。
懐かしい重み。
そういえば、知念が帰って来てから膝のり知念は初めてかも。社会人になってからは減ったしなぁ……。
なんて思ってからハッとした。
……やはり。
……独裁者の目が怖い。ものすごく怖い。
どんな処罰を受けることになるのか恐ろしすぎる。
……けど、たまには、膝のり知念を堪能したい。
そんな思いで、必死で視線に気づかないふりして知念に
「どうしたの?」って笑った。
「うんんー」なんて、ほろ酔い気味の知念は、次の瞬間には眠たそうに、もたれかかってきて。
あれよあれよと言う間に穏やかな寝息を立て始めた。
その様子に視界の端でやまがギョッとしたような顔をしている。そして、気配でわかる。絶対、ものすごく恐ろしいほどの真顔で近づいてきている。
……果たして、俺はどんな処罰を受けることになるのだろう。
だけど、俺は、やまからの鉄拳よりも、せっかく心地よい気分で寝ている知念を起こすことの方が嫌だから。
頭の中でジョーズのテーマソングが流れるのを振り切るように
少し前のことを思い出すことにした。
この家に。
やまの家に、初めてくることになった日のことを……
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