BOOK:79 ぱろでぃ

□@ 大野建築事務所 〜 引き寄せた糸
1ページ/10ページ

「…り………け…」

真っ暗な世界、聞こえた声。

「…んん……」



これは…確か…。



「……りょーすけー」


目を開くと、そこには、知念がいた。

あぁ、また、この夢か。
俺の記憶の中いる中学時代よりも、妙にリアルに成長した知念は、それでもやっぱり可愛いことに変わりなくて。


それならば、と、手を伸ばして、その身体を思いっきり引き寄せた。
妙に固い感触。妙な重さに苦笑する。あぁ、疲れてんだなって。


いつも疲れている時に見る夢。
また知念に会えるって、そんな夢。


朝起きると、もちろん知念は居なくって。
枕だったり、布団だったり。
…人、だったり、を抱きしめてるんだけど。


それでも、想像だとしても俺は癒される。
知念がどこかで元気にやってるだって思うだけで…















「……!!!」


…ん?


「…痛い痛い!」



妙にリアルな重み。

声もまるで知念。



…まるで……。











「っあ!!」


バッチリ目を開けば、
目を白黒させる知念が腕の中にいて。


「ご、ごめん!!」


慌てて腕を外したけど、知念はグッタリとハァハァ息を吐いていた。



…そうだった!
俺は昨日、知念と再会して。



……それで、それで

「…あれ!?裕翔は!?」

…あれは夢か!?

「…ゆーてぃーは…始発で……」

…あ、違うか、全部現実か。



そしてパッと視線を移す。
その先には、かなり近い位置に涙目になっている知念がいて。

飛び起きて、その傍に正座した。

…やばい。
多分、抱き寄せた。
しかも、思いっきり…。

寝ぼけていたくせに、妙にその温度とか匂いとか感触を覚えてて。
その余韻に、こんな時なのにドギマギする。
高まる熱をどうしたものかと思っていたその時、知念から「僕を殺す気!?」と一言。

どうやら息が整ってきたらしい。
その声に頭から冷や水をかけられたみたいにシャンとして、「ほんっと、ごめん!寝ぼけてて…」と、そのまま、何度も頭を下げた。

傍で知念がゆっくりと起き上がった気配がして、恐る恐る顔を上げると、その顔は苦笑しながらこちらを見ていた。

「…随分と刺激的な朝になったよ」

首のあたりを気にする知念に、もう一度「ごめん…」と零せば、知念は「全く。誰と勘違いしたんだか。」と、小さく笑うのだった。

気を使って言ってくれたであろう、そんな言葉に、胸が痛くなる。



…勘違いなんて、してないよ。

そんなことを言ってしまえば困らせるだろう。
きっと、友達としての距離感を、俺が間違わないように知念がくれた言葉。

それを無下にするような言葉を、俺が言えるわけないんだ。

…だけど。
冗談で乗るような強さは持ち合わせていなくて。ただただ、俺はまた「ごめん」とこぼすのだった。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ