BOOK:79 ぱろでぃ
□@ 大野建築事務所 〜 親友以上ライバル未満
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今でもお前が好きだよ。
そう言おうと口を開いた、その瞬間。
「ちねーーーん!!!!!」
懐かしい、バカでかい声が聞こえてギョッとして振り返った。
「あ!ゆーてぃー!こっちこっち!!」
駆け寄って、大型犬のごとく知念に飛びついたのは、懐かしい顔だった。
「…ゆう、と……?」
驚いて、目を見開いて零すと、
その顔がこちらを向いて、満面の笑みを浮かべる。
「っわ!やま!すごい!スーツ着てんの!?わー!すげー!!!」
「っうわ、何だよお前!」
かと、思えば、いきなり抱きつかれ、思いっきり顔をしかめて、引き剥がそうとしたんだけど…。
「…ほんとに……本当に、やま、だよね?本物?」
真剣な声に、言葉を失った。
知念と離れた高校時代。
あまり思い出したくもない、その頃。
俺は、裕翔にも連絡を取ることはなかったから。
「…本物、だよ」
心配をさせたのかもしれない。
申し訳なくって、優しくその背中を叩いてやれば「っま!やまの偽物出回ることないだろうしね」
ってすっかり笑顔に戻った裕翔がいて。
次の瞬間には俺と知念の手を引いて「飲み行くぞー!」と騒いでいた。
…まったく、こいつは変わんねぇな。
思いっきり睨んでやったのに、
横目に映った知念の満面の笑みを見た瞬間。
全部が「まぁ、いっか」って思ってしまう俺は、なんて単純なんだろう。
「でね、涼介が社員にいるかもって思ったから、ゆーてぃーにもしも涼介だったら連絡するねーって言ってたの」
それから俺らが向かったのは24時間営業の安い居酒屋。
裕翔に仕切られるがまま、宴が始まった。
聞けば、同じ高校に進学した知念と裕翔は、大学こそ別れたが、お互いに連絡を取り合って、未だに月に一度は飲みに行っているという。
俺が知らない間の知念を裕翔が知っているんだと思うと、悔しいけれど。
もしかしたら、知念の寂しい時を支えてくれたのは裕翔なのだろうか?と思うと、素直に感謝したいと思った。
知念の笑顔を、変わらないままでいさせてくれて、ありがとうって。
「そう!顔似てるけど、変顔してて、よくわかんないかもしれないって連絡きたから何事かと思ったよ!
ね!やま、どんな顔してたの?こんなの?」
「あはははは!そうそう!」
「お前!そんな顔のわけないだろ!」
「じゃあ、どんな?」
「…こんなんだよ」
「「あははははは」」
まるで昨日も会っていたみたいな空気に。
変わらない2人に。
なんだかやっと、帰ってきたって気がしたんだ。
高校に入学して、1人、みんなが居ない地に行って。
卒業のタイミングでこっちに戻ってきた。
その時、見慣れた土地にホッとしたけれど、それの比じゃないくらいに、今。
やっと帰ってきたって、
この笑顔に、笑い声にホッとしている。
あぁ、どうしよう。
最高に楽しいのに。
気を緩めたら泣いてしまいそうだ。