BOOK:79 ぱろでぃ

□@ 大野建築事務所 〜 2度目の出会い
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「……!」





驚きのあまり、声も出なかった。

人は、本当に驚いたらこんな反応になるんだな、なんてどこか冷静に考えているような気もするけど、ちょっとどう反応していいのかわからないぐらい驚いていて。

もしかしたら驚きすぎて、硬直してるのだろうか、とも思ったけど、視線の先の人物が、こっちを見た後少し下を向いて笑ったから、きっと何かしらの表情は出ているはずだ。



「ちょっといい?」

のほほん、とした。
それでもよく通る所長の声がかかれば、皆、って言っても、今この事務所にいるのは俺とやぶさんだけだけど。
手を止めてそちらを向いた。


「裏切り者の、いのちゃんの代わりに今日から入る子紹介しまーす」
「ちょっとー!裏切り者って!」


所長とともにこの事務所を立ち上げ、二人三脚でやってきた伊野尾さんが、個人で事務所を立ち上げることになった。

伊野尾さんはここに居たいって、言ってたみたいだけど、「お前はもっと上に行ける」って、所長が資金とか全て用意したという話だ。

そんな事情で、建築士が減った我が事務所。
そこに、新入社員が。



それが、俺の驚きの理由だ。



「侑李、はい。挨拶して」


所長に促され、少し照れたように口を開いた。その瞬間、心が中学時代に引き戻される。


中学2年生の、あの、暑い日のことに。
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