BOOK:79 りある
□C夜空に願いを
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+゜・☆+゜・ ym side
「アイドルでいたいんだよね。
一生、ステージの上で、キラキラ踊ってたいの。」
相棒の、そんな話を聞いた時が、俺にとって……
「そのために邪魔になるなら恋愛はいらない。一生、1人でいい。僕の幸せは、アイドルで居続けることだから。」
……俺にとって。好きな人への思いが絶対的に叶わないものだと悟った瞬間だった。
ーーー知念は、彼女作んないの?
卒業して一年。久々に高校の同級生何人かで集まった時、そんな質問に対する答えとして、聞いた決意表明。
みんな“さすが知念はプロ意識が高い”とか“寂しいこと言うなよ”とかって、笑いながら返していたのに。
斜め向かいに座っていた俺だけは、真っ直ぐにその目を見て、強く頷いたんだ。
思いはしっかり聞いた。絶対に俺は間違えたりしないって。
……そんな、俺なりの決意表明を込めて。
知念は少し不思議そうな顔をして俺の名前を呼んだけど。
すぐに別の人に話しかけられて目をそらした。
知念が好きだった。
恋愛的な意味で、ずっと。疑いようもなく、好きだった。
いつかは思いを伝えて、振り返ってもらって。
そんな幸せな未来を思い描いていたんだ。
………だけど。 この瞬間、
そんな俺の幸せな未来は、永遠に叶わないものと悟った。
メンバーとの恋愛。
それは、どう考えても知念の幸せにとってプラスになるわけがない。知念から“幸せ”を奪う動機に“俺の思い”なんかは、あまりにちっぽけすぎる。
知念の幸せがアイドルで居続けることなら、俺にとってもそれが幸せだよ。
……だから。
だから、俺は、相棒で居続けよう。
君の幸せを、隣で見続ける、支え続ける相棒で。
そう考えて、思いを伝えることはしないと決意した。
知念の幸せを、一緒に叶えること。それが、俺の幸せだと。
……なのに、あまりに近い距離は、思いを増幅させるには十分すぎるもので。
知念の幸せをぶち壊してでも、自分のものにしてしまいたい。
って、身勝手な思い膨らんで。
好きになればなるほど、苦しくて。
だけど、離れるのはもっと苦しくて。
どんなに痛くても、苦しくても隣にいたい。
そうやってギリギリ隣にしがみついていると
“2人、まるで恋人じゃん”って声がどんどん大きくなる。
その度に、知念が笑う。
だから俺は慌てて言うんだ「そんなわけないじゃん」と。
言う度、苦しくなった。
自分で自分の首を締めていくようで。
言ってしまいたい「そうだよ」と。
それが現実になれば、どんなにいいだろうか、と。
そんな雁字搦めの中で、彼女に出会った。
知念のことを考えて、零してしまったお酒を拭いてくれた人。
“大丈夫ですか?”そんな一言が、やけに耳に残っていた。
とても…綺麗な人だと思った。
この人なら、好きになれるかもしれないと思ったんだ。
…………本当に。
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