BOOK:79 りある
□@積極的消極行動主義
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「どうせ暇なんだろ?」
届いたメッセージに笑って「家?」って簡単な返事。
すぐに用意をして、返事も見ずに飛び出した。
涼介のドラマが終わり、2人の時間が増えるようになった。
涼介は、こういう仕事柄警戒心が強くて。
その点、僕は楽なんだと思うんだ。
同じ仕事、同じグループ、そして何より昔からずっと一緒で、事情を言わずともお互いのこと、なんとなくわかるから。
まぁ、それに。
涼介は、僕も暇だってこと知ってるし。
深い意味のないお誘い。
だから僕もそれに乗るのは特に意味はないことなんだ。
「来たー」「んー」
すんなりと開いたオートロックの重厚な扉。
警戒心が強いくせに、こういうとこはテキトーだ。
絶対、僕の声じゃなくっても開けちゃうんだろうな。
どうすんだろう、全然知らない人だったら。
苦笑しながらエレベーターへ。
部屋の前にたどり着けば、ピンポンを押そうとしたタイミングで勝手に扉が開いた。
「おー」
お互い、特に表情を変えることもなく。
涼介が僕を顎で中に促して、
僕もそれに当たり前のように従う。
当たり前のように飲み物をくれたから、
それを、やっぱり当たり前のように受け取って。
僕らの関係はきっとずっとこうなんだと思う。
涼介が当たり前のようにくれるものを、僕は受け取って。
ずっと、そうやってきた。
今までだって。
…………きっと、これからだって。
呼び出されたのはお昼時。
特に何をするわけでもなく、たまにポツリポツリと会話して。
「知念」そう言われれば、となりに座るけど、
だからといって何をするわけではない。
ただ、ゆっくりと隣にいる時間が流れて、
気づけば外はオレンジに染まっていた。
「晩飯どうする?」「んー」
近い位置からの問いかけ。
そこに寄りかかって携帯ゲームをしていた僕は、いつも通りの答えを用意しつつ、一応は悩んだそぶりを見せた。
「なんでもいいー、だろ?」
だけど、そんなことは、涼介にはやっぱりお見通し。
笑いながら立ち上がると、キッチンへ向かった。
支えを失った僕は、ポスンとソファに埋まる。
目を瞑ると、自然と眠気がやってきたから。
少し眠ろうかな、と思った。
そうしたら、今。
こうやって大好きな匂いに包まれた中でも
“受け身”なままでいられる気がしたから。
「………知念?寝ちゃう?」
こんな瞬間に、手を伸ばして「君が好き」っていう僕は、
きっと、君の望む僕ではない。
「…………おやすみ」
その優しい声が聞けるなら、一生、このままでいい。
隣に置いた、ものを言わないぬいぐるみで。
もしくは君の足元に擦り寄るペットのままで。
この暖かい場所が居場所なら、それで。