BOOK:79 りある
□★バイバイ片想い
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もしかしたらもう、無理なのかもしれない。
ぼんやりと、その姿を視線で追いながらそんなことを考えた。
高校の頃、涼介からもらった夢のような約束。
「待ってて」って言葉から、もう2年以上の時が経った。
高校を卒業して、涼介がソロで活動したり、僕も一人でドラマをやったりして、個人での活動が少しずつ増えるようになった。
仕事は前のようにセットでずっと一緒ってわけではいかなくなって。
どうにも忙しいからプライベートだって、前のように会うわけにはいかなくなって。
もしかしたらね。
忙しさのために、涼介の中であの約束は、少しずつ少しずつ擦り減っていって、もう消えてしまったのかもしれないなって思うんだ。
…だとしたら。
視線の先で楽しそうに笑う涼介を見て思う。
涼介がそれが良いなら、それでいい。
涼介が楽しんで、幸せになるのに、僕は友達の位置にいたほうがいいなら。それでいいって。
「知念!」「ん?」
クルリ、振り返った涼介に手招かれて隣に座ると「今日ご飯食べれる?」ってほほ笑まれて、笑って頷いた。
相変わらず涼介は優しくて。
だから僕の思いはどんどん膨らんでしまうけど。
涼介の方は違うのかもしれない。
色々広い世界を見る中で、僕を恋人にするのはちょっと違うって思ったのかもしれない。
だけど優しい涼介はそれを言えないままで。
僕をきっぱり振ることがないまま。
まぁ、それが友達の位置でも、親友でも、相棒でも。
とりあえず永遠に隣にいることも変わらない。
だったら、下手に動かない方がいい。
玉砕覚悟で告白して、もしダメでも、メンバーとして、仲良しコンビとして一緒に居るんだから。涼介に気まずい思いをさせるわけにはいかないし。
だったら僕は、これから、きっともっと大きくなっていくであろうこの思いを上手くごまかす術を学ばなくっちゃ。
例えばそう。わざとからかうみたいな口きいて。
ギャグ言って、笑う、とか。
「涼介のおごり?」「あぁ、いいよ」
「やったー、さすが僕の財布」「おい、なんだよそれ」
笑うとやっぱり笑顔を返してくれたけど。
ダメだ、それだけでまた思いは膨らんでしまう。
変なこと言ってるはずなのに、好きが大きくなって行くばかりだ。