BOOK:79 りある
□★僕のお気に入り
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「…っふ。固まっちゃうなんて、珍しい」
返事は?って優しい言葉にやっぱり抱きついて答えた。
「…いいよ、待っててあげる。」
「…うん、ありがとう」
ポンポンって、頭を撫でられて。
…ずっとドキドキさせられっぱなしだ。
なんだか、それが悔しくなった僕は。
珍しく首元にぶら下がっていた涼介のネクタイを引っ張って、鼻先をぶつけた後、言ってやった。
「…あんまり遅かったら僕の方から迎えに行くからね」
だから、早くしてよね。
「…んん」
「あ、起きた?」
目を開くと、優しくほほ笑む涼介が居た。
「おはよ、知念」って笑いかけられれば、胸がキュって高鳴る。
今も昔も。
ずっと変わらずに僕の胸をこんな風にさせるのは涼介だけだ。
「お腹空いてない?なんか作ろうか」
キッチンに向かった涼介のあとを追って、後ろからギュって抱きしめたら、涼介は「動きづらいだろー」って言いながらも、僕のまわした腕をトントンって軽く叩く。
「知念、チューしたいからこっち来て」
振り返ってくれた涼介が優しく笑うから、ちょっとだけ背伸びして。
キスをする寸前、涼介は言った。
「…そういえば。
さっきさ、懐かしい夢見たんだ。
知念に、初めて告白された日のこと。」
おんなじ夢、見てたんだ…。
それが嬉しくって、ほほ笑むと、涼介がキョトンとした顔をした。
…あれから。
カッコつけの涼介からの告白は、ずいぶん時間がかかったけど。
僕の気持ちは一度も揺らぐことなく、大きく育ち続けたんだ。
そして今。
こうして隣で笑っていられてる。
あぁ、僕はなんて、幸せなんだろう。
「…ちねん?」「あれ?もう、侑李じゃないんだ」
笑って言えば、涼介は「…お前もその夢見たのか」って照れたように笑って。
それから。
そっと、優しいキスをくれたのだった。
きっとね。
付き合ってても、そうじゃなくても。
僕たちの思いは変わらないね。
大丈夫だよ。
ずっと僕は、涼介だけ見てるから。
「…大好き」
そんな思いを乗せた言葉も、
きっと、涼介になら、伝わったことだろう。