BOOK:79 りある
□★僕のお気に入り
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「…フニフニじゃん」
涼介は主演していた連続ドラマの収録が終わって、僕は主演映画のプロモーションが終わって。
なかなか会う時間を作れないほどに、忙しかった僕等にも、ちょっとはのんびりできる時間が出来たある春の日。
特に何をするでもなく、二人でのんびりソファに座っていた。
「そんなことないよー」
手持無沙汰なのか、僕の手で遊ぶ涼介。
「この手があんな上手にピアノ弾いちゃうのかよぉー嘘だろー」
今日は指輪もしていない手が、僕の手を掴んだり離したり。
なんだか可愛いなって思っていれば「…ゆーり」ってまどろんだ様子でポツリ。
あぁ、甘えたいときの涼介だ。
笑って「なぁに?」ってそっちを見れば、涼介もフワリと笑う。
「ゆーり?
ねぇ、俺のこと…俺だけ見てて。
絶対、他のやつのところになんて行かないで。」
キュって掴む手が強くなったので、
あぁ、涼介、やきもち妬いちゃってたんだってやっと気付いた。
「僕は涼介だけだよ」
笑い返すと、涼介は「…知ってる。」って一言。
思わず笑うと「…俺、知念がいないと頑張れないから」って本気なのか何なのかわからない言葉を残して、涼介は勝手に眠りについた。
僕の方も、その温かい体温につられて、ほんの少し、眠りについた。
そして見た夢は、少し懐かしいあの時のお話…。
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