BOOK:79 りある
□★すまいるそんぐ
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もしあの時、
うっかり口を滑らせていたら、何か変わっていただろうか…と、たまに思う。
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「ちねーん、ノート見せて」
昼過ぎになってから悠々と登場するやいなや山ちゃんは知念に声をかけた。
これはいつもの光景で。
見慣れているその登場なのだけど、知念と俺の席を中心に何人かで話していた空気はピタリと止まる。
そして俺は、ほんの少し。ほんの少しだけ、息が苦しくなる。
「おはよ、山ちゃん。
えっと…これとこれと…昨日の分もいる?」
やっぱり知念はいつものように笑ってガサゴソと机からノートを取り出して、当たり前にそれを渡す。
俺も俺で、やっぱりいつもの通り喉の奥の方がキューっと詰まってしまった。
「おはよう。
あー、それは、いいや。サンキュ」
苦笑いした山ちゃんがやっと知念から目線を外して、止まっていた空気が動き出した。
みんながここぞとばかりに声をかけるのを、なんとなく横目で見て、俺は俯く。
山ちゃんは既にスターで。
知念はそんな山ちゃんの1番の理解者で。
そんな2人はキラキラしてて、みんなに人気で。
みんなが話したい人物だから。