BOOK:79 りある

□★小ネタ集
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「糖度100%」ym side
NYCな頃


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急いで向かうスタジオ。
少し新幹線の時間が遅れてしまったことは、すでにマネージャーから話がいっているはずだが、やはり先輩たちを待たせるのは気が引ける。


「すいません、遅くなりました!」

ノックすることなく飛び込んだ楽屋。
…が、後悔した。

「あ、優馬!おはよー」
「おはよー。大変だったな」

…心の準備をしてから入るのを忘れていた。

広い楽屋の中、ソファの上でぴったりと。
それはそれはもう、本当にピッッッタリとくっついて座っている二人。
もちろん、山田くんと知念くんである。


「…おはようございまーす」

なんだここは。
デートスポットか?鴨川か?いや、鴨川でももうちょっと離れて座るやろ。


心の中でツッコミでもしていないと保ってられないほどのラブラブオーラ。
こちらはすごすごと準備を始めた。

既に準備を終えている二人は本当に、ずっとくっついてイチャイチャ。

この二人のスゴイところは、ずっとこうやっているところだ。
ちょっと離れたと思っても、しばらくするとまたピッタリくっつく。

「やまちゃん、ぷにぷに〜」
「やめろよお前〜」

そんなに長くはかからなかったとはいえ、準備している間も飽きることなくずっとイチャつき続けるのだ。

「フフフ」
「…くすぐったいわ!」

…いや、どういうタイミングで話しかけよ。
これ、話しかけたらめっちゃにらまれたりするやつやろ?

準備が早めに終わってしまったことを悔やみながら

「…お待たせしましたー」

と、恐る恐るイチャつく二人に声をかけると、ニッコリ笑った知念くんが「待ちくたびれたよー」なんて、簡単に山田くんから離れていった。

良かった。にらまれたりしなかった…と思ったのも束の間。ニコニコの知念くんの横で、悲しそうな顔の山田くん。
いつも鬱陶しい鬱陶しい言うくせにいざ離れたら悲しいって。ツンデレか!
いや、わかりやすすぎやろ!

一名、テンション極寒になっている人を引き連れてみんなでゾロゾロと楽屋からスタジオまでの道を歩く。

「優馬ー、あのねー」

極寒の一方、ふわりふわりと俺の隣を歩く知念くん。
その姿をずっと山田くんの視線が追いかけていることには気付いていないのか、それとも気づいてて無視しているのか…。
何故かニコニコと俺に話しかけている。いやいや大好きな“やまちゃん”がめっちゃ見てんで。本当になんで?
チラッと横を歩く可愛らしいアイドルを見てみると「ん?」なんて小首を傾げられてしまい、苦笑いを返した。

…この人は食えんなぁ、なかなかに小悪魔。

と、思うが早いか、その声がかかるが早いか。
「優馬!」
「…え?」

お声がかかったのはまさかの俺の方。
何故か俺の手首をがっしり掴んでずんずん先に歩いていくのは山田くん。

え?なんで?なんで?

チラリと見えた知念くんは悲しそうな顔。
ほら!山田くん!あなたの知念くんめっちゃ寂しがってますけど?


スタジオに着いてもご機嫌斜めな山田くんとは特にこれといった会話もなく。
カメラマンさんたちに挨拶するだけ。

いやいやいや。わかりやすすぎるって、本当。

遅れてスタジオ入りした知念くんが、顔見知りのスタッフさんと楽しそうにお喋りしているのを見てまた顔を歪める山田くん。
ほーら。俺から引き離してもみんなのアイドル知念くんは楽しそうにしてるんだから。
どうせ拉致するなら素直に知念くんを拉致しろって。
若干手首痛いし。…まぁ、知念くんならこんな強く握ったりしないんやろうけど。

「じゃあ撮影からお願いしまーす」

そうして始まった撮影。
初っ端だったピン撮影では全く不機嫌な様子を見せない山田くん。
うん。さすがはプロ。

一方、そんな山田くんのことをキラキラの目で見つめる知念くん。
たまに「ね、カッコイイね、やまちゃん」なんて俺にこっそり言ってきたりしながら。


…俺にはわからん。
こんなにお互い思い合っているのに、二人はタダの友人というのだから。

その後、知念くんの撮影では、やっぱり山田くんがデレデレの顔をしていたし。

俺の撮影の時なんて、二人ピッタリくっついていて。必死で俺のことを笑わせようとしてきて。
変顔とか奇声出したりとかよりも、よっぽどその二人の距離感の方に顔がほころんでしまった。

そんな撮影を経て行われた座談会形式のインタビュー。
ピッタリくっつく二人と俺に課せられたお題は「やきもち」。
めっちゃタイムリー…。と、思いつつ話を進めていれば、山田くんも自分がやきもち妬きの自覚があることが発覚。

…知ってて、隠そうとしないんやね。いや、いいけどね。

何ともおかしな撮影を終え、楽屋へ戻る。
たちまち再びいちゃつきだす二人。
もう少し見学してもいい気がするけど、新幹線の時間もあるしそろそろ。

「えぇ、優馬もう行っちゃうの?」
「もう新幹線なんで。」

寂しがってくれるのはうれしいけど、明日も学校あるし、帰らないわけにはいかない。
少し困ったように返事をしてみれば、知念くんお得意の爆弾発言。

「だったら一緒にやまちゃん家泊まろうよー」

みんな一緒の方が楽しいじゃん。なんて、無邪気に言うけれど。
あなたのその発言で山田くんのやきもち妬きが増幅していること、気づいてます?

ほら、今も。
分かりやすく顔色が変わった。

「いや。遠慮しときます。
二人の仲、邪魔するわけにはいかないので。」

なんて返せば。
「なんだよそれ!」という山田くんの声と
「確かにねー」という、もちろん知念くんの声が重なった。

知念くんの返事にやけに嬉しそうな顔で「何言ってんだよ」って笑う山田くんと
「僕と二人っきりの方が嬉しいくせにー」って、やっぱり笑う知念くん。
「おま…ばかやろう。」顔を真っ赤にしている山田くんは何ともキュート。
…んで、二人きりが良いことは否定しないんやね。

二人の笑顔に見送られて、そこを後にした。
小見数時間の撮影だったけど、存分に。ぞんっぶんに糖分補給させてもらった。

次に会うときは、果たしてどんないちゃつきを見せてくれるかな。

気付けばそんなことを楽しみにしていて。
何だかんだそんな二人のいちゃつきを見るのが自分は好きなんやなぁ。

なんてことを考えながら新幹線の中、眠りにつくのだった。
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