BOOK:79 ぱろでぃ

□A只今、天使研修中 番外編集
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拍手御礼 GW特別編
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燦々と照りつける太陽。
眩しさに眉をひそめると「知念、眩しい?」ってゆーてぃーが自分が被っていた帽子を差し出してくれたんだけど、「いいよ」って言うより早く「お待たせ」って声がして。
顔を上げると、チューハイを持った涼介と、両手にビールと枝豆を器用に持つ大貴がいた。

「わー!だいちゃんありがとうー」
そうやってビールを受け取るゆーてぃーに倣って「ありがと、涼介」って手元のチューハイを受け取ると「いいえ」って優しい笑顔が返された。

やっと訪れた大型連休、ゴールデンウィーク。

記憶の中では涼介と過ごしてたけど、実際のところは2ヶ月近く入院していて、さらに新しい会社でってことで、もしかしたら知らず知らずにストレスが溜まっていたのかも。
今日こうして、ゆーてぃーと大貴、そして涼介と遊びに来ていることが嬉しくて、楽しくてしかたない。

そもそも、今日こうして、ここにきているのは、4人で遊びに行こうって話から。
遊園地に動物園、いっそ海外…なんて色々候補は出たけど、結局あんまり時間もなくて、近場のリゾート地を選んだ。
あんまり人のいない海の綺麗なコテージでゆっくりしようって。

いつかの温泉旅行の時のように、涼介運転のもと、やってきたコテージ。
早くも開店している海の家に感動して。
あんまり人のいないビーチにも感動して。
とりあえず…と、飲み物を買いに行ってくれた涼介と大貴を、ゆーてぃーと浜辺散策しながら待っていた。

飲み物とおつまみに、とりあえず乾杯して、さっきよりは幾分日差しのましなところに腰掛ける。
浪の音と鳥の鳴き声、葉っぱのかすれる音。
それだけしか聞こえない中で大好きな皆がいて。
…あぁ、僕幸せだ。

「あー!いいなー!海は!!」
そんな僕のメルヘン思考を遮るような大声と共に砂浜に横になった大貴。
周りから注目されるぐらいの大声に驚いて、体をずらすと、思いのほか近くに座っていたらしい涼介にぶつかった。

「あ、ごめん」

ぴったりひっついてしまった身体。
……そりゃあ、あの1ヶ月の間はずっとピッタリくっついていたけど、涼介の記憶からそれが消された今、僕はただの同僚なわけで。
……比較的、気に入られている気はするけど、普通は、成人男性にひっつかれるってあんま良い気しないよね?暑いし。

そう思って、少し距離を取ろうとしたけれど、コテンと肩に乗った重み。どうやら、涼介が肩に頭を乗せたらしい。

驚いて、あと嬉しくて、それからちょっと緊張もして。
色々ごちゃ混ぜの気持ちだけど、なんとか「…眠いの?」って言えば「……ちょっとだけね」って声が返ってきた。

…ふふふ。可愛い。
こうやって、涼介が僕の肩に頭を乗せる、この体制は、僕が天使研修をしていた時にもよくしていた。

「どうしたの?」って尋ねるといつも「眠いだけ」って言ってたから、きっと僕はただの枕代わりで、あんまり意味はないんだろうけど、僕としては結構好きな体制だ。
なんだか信頼されているって感じがして。

思えば、あの時と同じ1ヶ月が経過したわけだ。
天使研修の時は、1ヶ月でおしまいだってわかっていたからか、色んな気持ちが急成長していた気がする。
まぁ、今も、気持ちが膨らむのは変わらないけど……。

だけどね、なんだか、前の1ヶ月とは違う膨らみ方なんだ。
優しくて、穏やかで、ほんわかあったかくて。

前までは切ないとか苦しいとかがくっついていた“好き”だけど、今はただ純粋に好きでいられてる。

焦らなくていい。
ただ、好きでいればいい。
それがこんなに幸せなことだって思わなかった。

それを教えてくれた涼介には、やっぱり感謝しかないよ。
何度、恋をし直しても僕は涼介に感謝ばっかりなんだろうな……。



「……あ、山田寝てる?」

「……へ?」
珍しく潜めた大貴の声にちょっとだけ顔を動かしてそちらを見ると、たしかに涼介の目は閉じられて、規則正しい寝息をたてている。
「うわぁ、寝顔はほんっとに可愛いよなぁ」
「うん、世界一可愛い」
誇らしげに言い返すと、大貴は「なんでお前が喜ぶんだよ」って笑った。

「……こんな眩しいところで良く寝れるよね」
一方、ゆーてぃーは呆れたような笑顔。
もっと呆れられちゃうかもって思いながら「ね、帽子貸して?」って言うと、不思議そうな顔の後で、やっぱり、また呆れたように、でも、優しく笑ってくれた。
「はいはい。」そう言って涼介に被せてもらった帽子。
当の本人はちょっと居心地悪そうに「んん」と唸ったけれど、相変わらず夢の中。
スリスリと頭の位置を調整しているようだから、手を回して固定してやると、どうやら良い位置を見つけたようで、またスヤスヤと穏やかに寝息を立て出した。

「……愛だねぇ」
ゆーてぃーはクスリ笑うとカメラを構えて。
大貴はすっかり温くなったビールを一気に飲んでから口を開いた
「……そういや、山田言ってたなぁ。天使研修の時にさ。」って続けられた言葉。

僕もゆーてぃーも、なんとなくその言葉に耳をすませる。

「知念と一緒にいるとよく寝れるって。
なんか……ホッとするんだってさ。
安心するんだって言ってたよ。

っま、ムラムラするとも言ってたけどなー」
いたずらに笑った大貴の言葉がどこまで本当かなんてわからないけど。

「……まぁ、山田はさぁ、色々仕事とかも任されて、ドンドン負担大きくなっちゃって。
だけど、ストレス発散してる様子もないし……。

けど、知念に会ってからはほんっとに、幸せそうだったからさ。
本当に、一緒に居ると安心するんだろうな。
今も、こんな幸せそうに寝ちゃってるしさぁ」

皆で涼介の寝顔に視線を寄せた。
本当に幸せそうで、可愛い寝顔。

僕が大好きな表情の一つ。

もしも僕が、少しでもこうやって幸せそうに眠る涼介の理由になれているなら。
それなら、「……嬉しい」

ポツリとこぼした言葉に、ゆーてぃーと大貴は顔を見合わせて笑うのだった。


…それから。

なんだか照れくさくなって
「…でも、なんで大貴の方が涼介のこと知ってるの。ズルい」
なんてこと言いながら、プクッとわざとらしく頬を膨らませた僕に「かーわいいー!」ってゆーてぃーが大声を出すもんだから、すぐに涼介は目を覚ましてしまって。

「なんの話してたの?」って聞いてくるのをかわしてたら、ちょっと不機嫌になってしまったけど。
バーベキューを始める頃にはもうテンションが上がってた。


1か月という期限を設けられた中では知らなかったこと。
本当はマイペースで、喜怒哀楽も激しい。

…だけどね。
そんな一面を知ってもっと大好きになったんだ。

研修の頃は、明日が来るのがつらかった。
だけど今は、明日が来ること、楽しみで仕方ない。

明日はどんな顔を見せてくれる?
どんな風に笑ってくれる?ってね。







「そろそろ寝るかー」

夜、大貴の言葉に。
酔っぱらったふりをして潜り込んだその隣。

寝ぼけた様子の君は、どうやら僕がそこに来たことに気づいていないみたいだけど。
ギュって抱き着くと、当然のように抱きしめ返してくれた。

だから今日はこのままで。
さて、明日、涼介はどんな顔をするのかな?

想像しながら眠る夜は、今までで一番、幸せな夜だったように思う。
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