BOOK:79 りある
□★バイバイ片想い
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「りょーすけ!おはよう!」
距離を置けば…とか、なんだかんだ言ってたけど、やっぱり涼介がいる現場って思うと嬉しくって。
そんな風に僕はウキウキして、駆け寄った僕に、涼介の方は、あんまり楽しそうじゃないし、「あぁ…」ってどこかそっけなくて。
「…あ、ごめん。」
忙しいこと、わかってる。
そうだよね、そんな中で、あんまりべたべたしたら嫌だよね?
自分の中でそうやって納得して。
ぎこちなく笑うと、距離を置いた。
「ね!大貴!」
「いのちゃーん!」
幸い、僕には大好きなメンバーがいて。
皆、相手にしてくれるから。
…だから、全然大丈夫。
こうやって、少しずつ思いを減らしていかなくちゃ。
そんなことを考えて、他の人とごはんに行くこと、遊びに行くことを繰り返していれば、どんどん涼介との距離が開いてしまっていく気がした…。
…そんな、ある日。
「知念。」
珍しく完全に被ったスケジュール。
嬉しいよ?うれしい、けど。
やっぱりまだまだ好きな気持ちが大きいから、少し痛い。
楽屋に入ってきた涼介にぎこちなく笑う。
「おはよう、涼介」
「おはよ」って緩やかに笑ってくれる涼介にホッとしたのも束の間。ずかずかと近づいてくると、なんだかいつも以上に近い距離に座って。
「今日、終わり一緒だよね?飯行ける?」って真っすぐに目を見て言われてドギマギしてしまった。
「…あ、えっと。今日、ゲームしよっかなって…」
いつもと違う雰囲気に、なんだかちょっとだけ怖くて断ろうとしたけれど
「今日ぐらいは、俺を優先してよ」って言われれば、頷かないわけにはいかない。
「じゃあ、終わったらな」って頭を撫でられ「どうしたの?」って聞くより早く、そそくさと楽屋を出ていった後ろ姿。
涼介の気まぐれはいつものことだけど、こうやって急に来られると心臓に悪い。大好きだってこと、いやでも再確認させられてしまう。
今日もまた親友として始まって親友として終わる日なんだろうけど、ずっとそれは続くのだろうか。
……結局、僕は、ずっと思いを募らせて行くままで。
しかもそれは、日々更新されて行く。
「……これって、いつまで続くんだろう」
ポツリとこぼした言葉は、誰にも拾われることなく、楽屋の中で消えていった。
その日の撮影はなんだか集中できなくて。
それも影響したのか、押しに押して遅くなった撮影。
予定よりも3時間近く遅くなったから、きっとご飯は無しだろうなって帰り支度をしていると「知念、準備できた?」って涼介がやってきて。
驚いて「え、行くの?」って返すと「朝言ったじゃん」って苦笑が返ってきた。
「…だって、撮影押しちゃったしさ」
準備しながらもこぼすけど、涼介はなんだか携帯を見ながら「予約してたところはもうダメだから、俺んちね」って一言。
「あー、うん、わかった」
本当はお家なんて2人っきりのところ、あんまり行きたくないんだよ。
涼介は無自覚……というか、誰にでもそうなのかもしれないけど、やったら甘い顔してこっちを見てくるから、ドキドキはするし。
たまに「侑李」って下の名前で呼んでくることも。どうせ呼ぶならもうずっとそっちにしてくれた方がいいって雑誌とかを通して訴えてるのに全く相手にしてくれない。
撮影でもないのに近いし、やけに優しいし。
そのくせ、特に言葉はないから、きっと僕が特別なんじゃなくて、それが山田涼介という人間なんだろうって思うんだけどさ。
2人っきりのお家の後は、必ず思いが昂ぶるんだよ。
……本当、勘弁してほしい。
「知念、早く行こう」
急かされるように楽屋を出て、当然のようにマネージャーさんに涼介宅まで2人送ってもらう。
特に話すことは無いけれど、隣に座る。
もし僕が告白してしまったら、もっと距離は離れていくのだろう。
…だったら、僕が望むのは、出来るだけこの距離が長く続くことだ。
「はい、着いたよ」