BOOK:79 ぱろでぃ

□A只今、天使研修中 After Lesson
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涼介は、再び僕の研修担当になった。
天使研修の時は最初は嫌がったくせに、今回は「絶対にやります!!」なんて目をキラキラさせて。
出世欲が大きいのか、なんなのか。

まぁ、僕としては大好きな涼介と一緒に居られるから幸せだったけど。
でもね、涼介のこと“山田さん”って呼ばなきゃいけなくて。それはすっごく居心地悪かったから、すぐに涼介って呼び方に返させてもらっちゃった。
なんだか、涼介は渋い顔してたけどね。






「知念!知念!どうしよう!!ちねーんー」
「うるさい!痛い!!!涼介、暑い!!!」

天使研修の時はたった2日で実現できた遊園地デートにこぎつけるまでは1ヶ月、ゴールデンウイークまでかかっちゃったんだ。

相変わらずお化け屋敷を怖がる涼介に大笑いして。

「お前!俺が苦手なの知ってただろ!!」
「えー、どうかなー」
「ずっと笑ってたからね!入る前から!!」
「もともと顔が笑顔なんだよー」
「お前なぁー!」
帰りの車は言い合いしながら帰ったんだ。
やっぱりそれも、大笑いだった。










「…おいで。」

そんな風に柔らかく笑って、当たり前に抱きしめてもらえる関係になるまでは3ヶ月。

「……りょーすけ」「ん?」「大好き」
「…うん」
「りょーすけはー?」
「……好きだよ」

あの時は痛くて仕方なかった言葉が、今は心がポワッと温めてる。
……涼介も、そうだといいな。

もう、気持ちの成分表を見ることはできない。
だけど、その分、
僕は長い時間を一緒に居られるから。

ゆっくり、知っていこうと思うんだ。




……なんて。

焦らないでいようって思ってるんだけど。
どうにも僕は1人のお家が寂しくって。
だけどなかなか言い出せなくって。

やっとそれが涼介に伝わったのは、冬の足音が聞こえてくるような寒い夜。

「……もう、帰る?」「うーん……」
僕の鈍い顔に、涼介が「明日早いだろ?」って頭を撫でてくれた日だった。

「じゃあね、涼介」って笑ってドアを開けようとした僕の腕を引いて、後ろからギュッと抱きしめたんだ。

「……もう、帰らないで。ずっとここに居てよ。」

こうしてやっと一緒に住めるようになって。あの時は当たり前に一緒に住んでたのに、半年間もグダグダしちゃったんだから、真人間同士の恋っていうのは時間がかかるのかもね。








その間、

たくさん怒らせたし、
たくさん泣きたくなることもあった。

だけどそれ以上に、
どの瞬間を切り取っても、僕は幸せで。





ねぇ、サボテンさん。
もうすぐ、ここに来て一年ですが、居心地はどうですか?

2つ仲良く寄り添って成長する君たちみたいに、僕たちもなれてますか?
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