BOOK:79 ぱろでぃ
□A只今、天使研修中 After Lesson
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やっと落ち着いて真っ赤な目でポリポリりんごを食べるゆーてぃーに、天使研修のこと話したらやっぱり覚えてて。
引継書も見せてくれたから、やっぱりあの日々は僕の夢じゃないようだ。
……それなら。
「涼介に会いたい」
もはや機械と化しているらしい涼介に会いたい。
忘れられている僕が、何をできるかわからないけど。
できることなら感情を蘇らせてあげたいし。
それに何より。
僕が会いたいから。
何も言わずに微笑むゆーてぃーに、ちょっと照れくさくなって、またリンゴに手を伸ばした。
「……あ。でも、きっかけが無いよね…」
すごく当たり前のことに気がついた。
いきなり現れて「涼介!!」とか言いだしたら怖がられる?
あ、でも天使研修もそんな感じだったけど…。
いやいや、いまの涼介は、もはや機械だ。
温かく受け入れてもらえるとは思えない。
“言っていることがよくわかりません”とか返されちゃうかも。
それはショックだ。
ゆーてぃーの記憶はあるはずだから、ゆーてぃーの友達、とかって紹介してもらう?
いや、でも。
なんかもっと自然に会いたい……。
日常の中で、普通に…。
どうしたものかと首をかしげる僕に、ゆーてぃーはニッコリ笑った。
「ねぇ知念。
2人はね、もともと運命だったんだと思うよ。はい。」
そう言って、差し出してくれたのは。
僕が肝いりで準備していたプロジェクトの資料。
“社外秘”と書かれている。どうやら最新版らしい。
なんだろうなぁ〜って思いながらペラペラとめくっていく中で、見つけた、その名前。
「……うそ、でしょ…」「本当、本当。すごいでしょ?」
先方のイベント会社。
プロジェクトメンバーの中に書かれていたその名前。
溢れる涙がポトポト落ちることも気にせずに、
僕は、そこに書かれた大好きな人の名前を指でなぞっていた。
「…涼介とやる、プロジェクトだったんだぁ」
「頑張ってよかったね、知念」
ニッコリ笑ってくれたゆーてぃーに何度も何度も頷いた。