BOOK:79 ぱろでぃ
□A只今、天使研修中 Lesson3 2/2(Sat)
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そこから、出口までの時間。
「うわぁあー!!!知念ー!!」
「はいはい、ここにいるよー」
「なんか落ちてきた!?血!?」
「ただの水だよ」
「うわっ!お前誰だよ!」
「それ、ただの人形」
喉が枯れるほど叫ぶ涼介に、僕はずっと笑いっぱなしだったんだ。
お化け屋敷から出るときにはもうヘトヘトで。
あんなビビりまくって、僕以上に体力も消耗したであろう涼介なのに。
出てくるなり放ったのは「知念、楽しかった?」って、そんな言葉で。
もう、僕はお手上げだ。
満面の笑みで頷いた。
「うん、涼介のおかげでね」って。
「涼介、遊園地嫌いなの?」
落ち着くために、とりあえず座ったベンチ。
当たり前のように飲み物を手渡してくれた涼介に尋ねると、苦笑しながら「高いの嫌いだし、暗いのも苦手だし、狭いところもダメ」って答えが返ってきた。
「へぇー、じゃあジェットコースターもダメだ」
「うん。嫌い」
明確な返事に今度は僕が苦笑した。
…本当。なんで来てくれちゃったのよ。
って聞いても‘お前が来たいって言ったんだろ’て。
きっとそれだけ返ってくるだろうし。
「次に乗りたいの決めた」
どんなに怒らせようとしても無理なんだから。
日常的にピリピリさせようとするのはもう諦めよう。
普通に生活していく中で、他人なんだから一度や二度はイラっとするタイミングはあるだろう。
そこで一気に勝負をかければいい。
「ん?どれ?」
園内の案内図を広げる涼介に、笑った。
「涼介の車」って。