BOOK:79 ぱろでぃ

□A只今、天使研修中 Lesson3 2/2(Sat)
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ちっとも怒ろうとしてないから、もう無駄かな。
って理由をつけて、立ち上がり、座敷わらしと喧嘩する涼介の元へ。


「りょーすけ」

「あー!知念!!」


暗いからよく見えないんだろうけど、顔をズイッと近づけられて。そのあまりに近い位置にドギマギすると、涼介はホッとしたように笑ってギュッて真正面から抱きしめてきた。
そっかぁ、そんなに怖かったのか。
よしよしってその頭を撫でてあげようと、したけれど…。

…ん?抱きしめて、きた?

冷静に今の状況を確認したい。
側から見たら、成人男性2人。

チラリ、右を見ると、座敷わらし役の人。

抱き合ってる…?
…抱き合ってる!?

「っちょっ!!何やってんの!?」

慌てて腕を突き出して距離を取る。

何!?なんなのこの人!
たしかに心細い思いしたのかもしれないけどさ!に、しても急にこんな…抱きしめたりとかする!?しんっじられない!!

「…よかったぁ。
どっか行っちゃったのかと思って……」

大パニックの僕に、涼介は怒るどころかニッコリ微笑んでいる。
その表情に、すっかり毒気は抜かれてしまう。
…これじゃあ、本当にどっちが天使なのか……。

「…はぁ。」
「ごめんな、ギュッて痛かったよな?」

もしかしたら涼介には怒るって感情が付いていないのかもしれない。ッムっとすることはあっても怒ったりしないタイプの人なのかな。

…そうなると、もはや僕の天使行きは必須だ。

まぁ、それはそれで楽しいのかな。
…天使って何するのかわかんないけど。


「あの、次の人もいるので…」

「あ、ごめんなさい!」

座敷わらしの声でハッとして。
若干ビビっている涼介に笑って前を向く。

「行くよ。ちゃんと掴まって」

僕が腕を掴まれたのを痛がって逃げたと思っているのか、なんだか躊躇いがちな涼介。
仕方ない、と、その手を取って歩き出した。

掴んだその右手は、案外冷たくて。
ヒヤリとした触感にドキッと胸が高鳴った。

これじゃあ、まるで吊り橋効果だ。
バカみたいにドキドキしてる。
…本当、なんだか変な錯覚してしまいそうなぐらいに。

そんな僕の気持ちに当然気づかないで、
「うっわー!びっくりしたー!!」
すぐに、しがみついてきた腕。
だけど繋いだ手はそのままで。
ドキドキするのに、それが案外心地よいなんて。僕は、どうかしているのかな。
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