BOOK:79 ぱろでぃ

□A只今、天使研修中 Lesson3 2/2(Sat)
3ページ/6ページ

そして、今。

「待って!まじで無理だ!俺はマジでもう無理だ!!」

遊園地に着くなり、顔色の変わった涼介。
とりあえず向かったこの遊園地の目玉のお化け屋敷で、こんなことになってしまってる。

「…涼介、なんで入るなんて言ったのさ」

最初は後ろから肩を持っていたのに、途中からは真横でピッタリと腕にしがみついてくる涼介に苦笑しながら尋ねれば
「…お前が入りたいって言ったんだろ!!うわぁ!!!」
って悲鳴まじりの返事。

…言ったけどさ。

「…そこまで苦手だったら……」

こんな、屁っ放り腰になるぐらい苦手なら入らなくても…。
………いや、待てよ。

ここで、涼介を置いてっちゃえば、怒り狂うんじゃないか?
チラッと横を見ると、ひどく怯えている様子。

ちょっと可哀想だけど、
これを置いてったら流石に怒るだろう。





よし。そういうことなら即行動だ。

と、なると。この腕にべったりな男をどう引き剥がすかが、最大の問題だけど…。

「涼介、ちょっと離れて」「無理」

…だよね。
軽く血が止まらんじゃないかと思うほど掴んでいるから、そう簡単には離れないだろうけど。

うーん。どうしたものか。




…と、悩んでいたとき。



ヒュー
って安っぽい効果音と共に突然、目の前に現れたお化け。

「わぁーー!!!!」

ものすごい声をあげた涼介の力が少し緩まって。
今だ!って腕を引き抜き、走り出した。

「え!知念!?」


なんとも情けない声が聞こえて、チラッと振り返ると、その場でオタオタしている様子の涼介。
…しめしめ。怒れ怒れ。

ギリギリ涼介が見える物陰に隠れその様子をうかがうと。

「…ちねーん」

怒るっていうよりも、なんだか悲しそうな心細そうな声が聞こえて、


「ぅわっ!!!ビックリした!!!あ、知念?」



座敷わらしのお化けに話しかける始末。

…お化け役の人困っちゃってるし、
…僕はそこまで小さくないよ。



「うわっ!違うしっ!誰だよお前!!」

…座敷わらしだよ。

…本当。なーにやってんだか。
思わず笑っちゃうのは、もう仕方ないだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ