BOOK:79 ぱろでぃ

□A只今、天使研修中 Lesson3 2/2(Sat)
2ページ/6ページ

…しかし。
いかんせん、涼介のことを何も知らないから、何が嫌なのか全くわからず……。

「…涼介は?どこ行きたい?」

大貴に調査を依頼したけど、きっと返事が来るまでには少し時間が必要だろうし。昨日の今日はさすがに可哀想だ。

「うーん、そうだなぁ」

それまでは自力でなんとか嫌われなくては。
伺うように顔を見ると、涼介はやけに優しく笑って「イチゴ狩りは?」と、パンフレットを指差している。
そういえば、昨日涼介が会社に行っている間に漁った冷蔵庫にも、いちごがたくさん入ってた。

「いちご好きなの?」

旬だからっていうのもあるかもしれないけど、もしかしたら甘党?

「うん。」

ちょっと照れたように笑っている涼介。
その笑顔がちょっと可愛くて胸がキュンって高鳴った。
そっか、涼介はいちごは好きなんだ。
…じゃあいちご狩り……。


って、違う違う。
なんで楽しもうとしちゃってるんだ。

あ、でも涼介の大好きなイチゴのことを「不味い!」って喚き散らしたらさすがに怒る…?
いや、それは手塩にかけていちごを一生懸命育てた農家の人に失礼だ。

僕は、あくまでも涼介にだけ、負の感情を生み出せばいいんだから。

「…いちご狩りは、嫌。」

とりあえず、いちご狩りは却下だ却下。
ちょっと悲しそうな顔をした涼介に、
お?いい感じ?
って思ったのもつかの間、すぐに表情を穏やかなものに戻して
「そしたら…」って悩んでいる。

…なんって、いい人なんだ。

もう何度目になるかわからない考えで、頭が痛くなる。
…まずい、僕、天使になっちゃうよ。

それからも涼介は色々と提案してくれた。
映画見に行く?水族館は?ショッピングするか?
あまりに目を輝かせて言われるもんだから
「そうしよっか」ってこっちも言いそうになったのをなんとか押さえ込んで。
信じられないようなテキトーな理由をつけて断ったけど、全く怒るそぶりもない。
それどころか、楽しそうにケラケラ笑ってる。

もういい、家にいよう!
って言おうと思ったその時。

表紙にデカデカと書かれた遊園地だけ、涼介が提案して来ないことに気がついた。


「…ここは?」

恐る恐る、それを指差すと、明らかに曇ったその表情。

やった!見つけた!!きっと、遊園地きらいなんだ!!
絶対、遊園地に行く!
どんなに拒否されても絶対に譲るもんか!!!

「…行きたいの?」

引きつった顔のまま、そう聞いてきた涼介に「行きたい!」と満面の笑みで返せば、涼介は小さく頷いてスマホを取り出した。

「…あぁ、結構混んでるのかも。早く出よっか」

覗き込めば、涼介が調べていたのは渋滞情報。

「え!行くの!?」

驚いて目を見開けば「お前が行きたいって行ったんだろ」って眉をひそめられてしまった。

……なんて。
…なんてことだよ。

一度も拒絶することなく受け入れるなんて…。
涼介がいい人すぎる…。
唖然とする僕に涼介は「早く出よう」って腕を引いて来るもんだから、パニックの末、「あ、うん。ありがとう」って言ってしまい。
それに涼介はニッコリ笑顔を返してくれるのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ