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□あの子がいるのは
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僕がアベンジャーズに入って、初めてアベンジャーズのパーティーに誘われた。
お上品なパーティーなんて行ったことないし、服装はホームカミングの時のタキシードしか持っていない。
けど、メイ伯母さんに気付かれて、お洒落なジャケットを買ってくれた。
それを着こなせているか、わからないままパーティーの会場に着いて、心を落ち着かせて一歩を踏み出した。
僕がジュースを片手に端に追いやられている時に、僕と同じ年齢くらいの女の子が会場に入ってきた。髪を綺麗に纏めて、大人っぽいワンピースを着ている。関係者かな?と思って、彼女を見ていると、誰かを探しているのか辺りを見回している。
急に笑顔になった、と思えば一人の男性の下へ駆け足で向かい笑顔でなにかを話している。その男性をよく見ればキャプテン・アメリカだ。
そして、二人の間に割って入るようにして来たのがスタークさんだった。スタークさんが入ってもその女の子は、楽しそうに会話を交わしている。
僕の知らないアベンジャーズの一人なのか、と思っていたらブラック・ウィドウに声をかけられた。
「クイーンズの坊やは人見知りなの?」
僕が誰とも戯れず、ジュースを片手に端に追いやられているのを心配されたらしい。僕は、「こういう場所は慣れていないんだ」と伝えればブラック・ウィドウは顎に手を置き何かを考えている。
そして、僕の目線を辿ったのかあぁと口角を上げるブラック・ウィドウ。
「あの子の事が気になるの?」
指を指した先にはスタークさんと仲良く喋る女の子。僕は驚いて変な声を出してしまった。
なるほどね、とブラック・ウィドウは持っていたワインを飲んで僕に話してくれた。
「彼女、キャップと仲が良くてそれに嫉妬したトニーが突っ掛かりに行くのよ。トニーは彼女の父親代わりのような人だから」
「他のアベンジャーズの人たちとは?」
「ちょっと、ソーにはからかわれるのが多いみたいだけど、バナーとも私とも仲が良いわよ。妹みたいでね」
そう言って、ワインを飲み干したブラック・ウィドウ。
「名無し子」
急に誰かの名前を呼んだと思えば、さっきまでスタークさん達と喋っていた女の子がこっちに来た。新入りの僕の事なんて構わなくてもいいのに!
「彼とお話してあげて」
と言葉を残して、ブラック・ウィドウはお酒を取りに行ってしまった。女の子と僕は端で二人きり。
彼女を見るのも、恥ずかしくなって手もとで空になったガラスコップを見つめていた。
「スパイダーマン……だよね?」
「え?あ、うん。そうだよ」
いきなり、僕の正体を言われて驚いたけどアベンジャーズに入ったのだから当たり前の事だ。バクバクと鳴り響いてる心臓を抑えようとするけど、なぜか鳴りやまない。
「私、名無し子・名無し。あなたは?」
ほのかに赤い唇と大きな目が近付く。
「僕は、ピーター・パーカー」
そう僕は言うと、名無し子の口は弧を描いて僕と握手を交わしてくれた。
あれから、数分しか経っていない。だけど彼女と僕は同じ年だと言うことで話せる話題が沢山あって、ずっと同じ場所でずっと話続けている。
たまに、名無し子を呼ぶ声がするけど名無し子はそれを断って僕の隣に居てくれる。
「名無し子は行かなくていいの?」
「いいの。だって大人の世界に飛び込めないから」
そう言ってるけど、僕にしては彼女は本当にアベンジャーズの人たちと普通に話せて、仲が良さそうだし、今だって綺麗なワンピースを着こなせている。
名無し子は僕よりずっと、ずっと大人。
「私、ピーターが思っている以上に子供よ?そんな不安そうな顔しないで」
クスクスと笑って僕を励ましてくれる。
「ホームカミングの時は好きな人は先に相手見つけてて、私どうすればいいかわからなくて、泣いちゃったの」
それに、と付け加えてダンスが下手だと言うことも僕に教えてくれた。あと、僕と名無し子の二人だけの秘密にしてほしいらしい。
理由は、スタークさんに知られると色々とめんどくさくなるそうだ。
「トニーさん、本当のお父さんみたいなの。好きな人の話とかしたら、ずっと小言を言うのよ?もう嫌になるわ」
「名無し子!」
急に名無し子を呼ぶ声がしたな、と思えばスタークさんが名無し子を呼んでいた。ほらね、と僕に笑いかける。僕は訳がわからないまま、彼女の顔を見ていた。
すると、急に名無し子の顔が近付いたら、唇に柔らかい感覚。
なんだかわからなかったけど、急にキスをしたんだ!って気付いて体全体が熱くなる。
何の音も聞こえなかったけど、時間が経ってから周りの音が聞こえ始めると、僕と名無し子のキスを驚いていたりする声が聞こえた。
顔を離した名無し子は、頬っぺたが赤くなっていて茶化す声が聞こえる。
「おいおい、ここは映画の中か?」
「二人だけの映画かもしれないだろ?」
スタークさんに関しては、僕達を見ずに項垂れていてバナー博士が慰めているのが見えた。
「ピーター」
僕を呼んだ名無し子は、顔を真っ赤にさせながら僕に言ってくれた。
「今年はホームカミング、一緒にいてくれる?」
「もちろん!」