short

□もう一度触れたい
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※egネタバレあり




「名無し子……ごめん……」

私の腕の中で、私の愛しい人が消えた。その時、一緒に消えてしまえばこの悲しみも消えるのだろうか…と思った。

悲しみに暮れるなか、宇宙で過ごし時々このままこの無限の暗闇の中で死んでしまうのではないかと思う。
トニーもそう思っていたらしい。だが、幸運な事に一筋の光が私たちを照らしてくれた。


私たちがキャプテンマーベルに助けられ、地球に戻ることはできたがピーターを失ってしまった悲しみが大きかった。


ナターシャに支えられ、アベンジャーズ施設の椅子に座る。頭の中は愛しい人の事ばかりだ。


「ピーターが……ピーターが」


ピーターが居なくなってしまった時の事を思い出すと、また思考がマイナス方向にしか動かない。背中を擦ってくれるナターシャも、仲間を失っているはずだ。
モニターで消えた仲間の中に、ピーター・パーカーという文字とピーターの顔写真が写され、私は頭を抱えてしまった。
その、様子を見たスティーブはモニターを消してくれた。



なんとか、サノスを見つけたが、インフィニティストーンを使い果たし、もう何もできなくなってしまい私は途方に暮れた。
食欲が無くなり、五キロ痩せてしまった。私の様子にナターシャやスティーブは驚いてしまい心配をかけてしまった。

ショックで学校に行けていなかったが、このままではダメだと自分に言い聞かせて学校に行っていた。
顔馴染みのメンバーは居なくなり、学校には全く知らない人しか残っていない気がした。


いつの間にか5年経って、高校生から大学生になってしまった。

その間も、片時もピーターを忘れることはなかった。あの胸の中で消えた温もりを。


高校生の時にピーターと通っていたピザ屋さんに行けば、オーナーが代わっているが味は同じでピーターとよく食べた事を思い出す。

ーうん、やっぱりここのピザは一番だ!ー
なんて、ピザの評価をつけて不味いピザや美味しいピザを教えてくれた。




そして、初めてデートをした公園。
賑やかだった公園も今は寂れ、噴水も止められ水が濁っている。
濁った水を見ながら、5年前の事を思い出してみた。


ピーターが私をこの公園に連れてきてくれて、色んな話をした。好きな歌の事、好きな天気の事、好きなヒーローの事。

私はもちろんスパイダーマンが好きだ、と答えると、彼は頬を赤く染めながらも僕の事は?と聞いてきた。

そのあとは、私とピーターは見つめ合い軽いキスをしたのを覚えている。

私にとって、初めての異性とのキスだった。キスの仕方なんて、どこかのサイトで調べたがその内容は頭にはない。
そして、私の肩を恐る恐る抱くピーターは少し間を空けてまた好きな物の話をした。

奥手な彼も私も、心地のよい平和な休日のデートだった。





私は、一人でベンチに座り暗い空を見上げる。あのあと、青い空を見上げることは無かった。


涙か、雨かもわからない雫が私の頬を濡らす。


ーもし、名無し子に悲しいことがあったら僕が一番に傍に駆け付けるよー


「ピーター……早く傍に来て」



私の言葉は、風に流され残ったのは乾いた唇だけだった。




To be continued
for:確かに恋だった


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