壁の大きさ

□5話
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なんで、敵が……。センサーはなんで感知しなかったのか。
そう考えている内に、相澤先生は敵の集団の中に入って戦っている。

プロヒーローの早さと攻撃力を目の当たりにして、私たちは少しだけ劣等感を感じた。私たちではなく、私だけかもしれない。

「早く避難を!!」

「轟!行くぞ!!」

飯田くんと切島くんに言われはっと我に帰った。回れ右をすると、黒い靄が前にあって皆が足を止めて靄を見ていた。

「避難はさせませんよ。初めまして、我々は敵連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは」

靄がゆらりと動く。靄の敵が発した次の言葉は信じられなかった。

「平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

敵の狙いは……オールマイト?
オールマイトがなんで、こんなに狙われる?何か、おかしい。

「氷炸……!」

隣にいた芦戸ちゃんが、微かに震える手で私の手を包む。私は芦戸ちゃんの手と顔を見ると、今にでも泣きそうでどうすれば安心させてあげるか考えた。
だけど、私も………。



爆破の音が聞こえて、前を見れば爆豪くんと切島くんが靄の敵の前に立っていた。

「ダメだ!二人とも退きなさい!!」

13号先生が聞こえたと同時に靄の敵の声が聞こえる。


散らして嬲り殺す


嬲り……殺す。
私たち危機が迫っている。そう思っていると前にいた爆豪くんと切島くんは靄に包まれた。
咄嗟に前に行こうとしてしまったが、芦戸ちゃんが引き留めてくれたけれど
このままだと。芦戸ちゃんが靄に包まれてしまう。

「うわっ!氷炸っ!!」

芦戸ちゃんを無理矢理にでも、離して靄から遠ざけて私がその靄に突っ込んだ。


一瞬で、目の前は水。そして、勢いよく突っ込んでしまった。
目の前に敵がうじゃうじゃいて、今水を出して逃げようてしても相手は……。

「氷炸ちゃん」

梅雨ちゃんが助けてくれて、船の上に投げてくれた。緑谷くんと峰田くんもいていて、少しだけほっとした。


「オールマイトを殺すなんて、できっこねえさ!」

「峰田ちゃん…算段が整ってるから連中こんな無茶してるんじゃないの?連中に私たち嬲り殺すって言われたのよ?」

梅雨ちゃんの話が峰田くんの話とは真逆なのがよくわかるが、梅雨ちゃんの話には納得できる。

『オールマイトを呼ぶために、私たちを嬲り殺すって……』

峰田くんは私の話にも怖がって緑谷くんから離れない。だけど、何かが引っ掛かる。緑谷くんもさっきからぶつぶつと何か言っているのが聞こえて、何かわかったのか顔を上げた。

「やつらに……オールマイトを倒す術があるんなら、僕らが今。戦って勝つこと!!」

「何が戦うだよバカかよぉ。オールマイトぶっ倒せるかもしれねー奴らなんだろ!?おとなしくが得策に決まってらい!!」

『この場所の奴らには勝てるよ……オールマイトをぶっ倒せそうに見えない』

私は水に浮いている敵達を指した。
明らかに靄の奴や、あの手が顔に引っ付いている奴とはオーラが違う。
私が言うと、峰田くんはけど……と言いかけて言葉を詰まらせていた。
緑谷くんはその敵達を見て、閃いたように言う。

「生徒の個性はわかってないんじゃない?」

「蛙の私を知ってたら、あっちの火災ゾーンにでも放り込むわね」

『梅雨ちゃんは水難が得意なはず』

梅雨ちゃんの言葉に私は頷いた。水難が得意な梅雨ちゃんを知っていたら、敵がここに送ってくる訳がない。そう考えて、四人で敵に聞こえない声で個性の説明をした。それぞれの個性を知らないと敵は倒せない。

梅雨ちゃんはそのまま、蛙の個性。緑谷くんは超パワーだけどバキバキになってしまうらしい。

「轟さんは?」

『火と水が両手から出せるんだけど、欠点は火を使いすぎると火傷状態になるし…水を使いすぎたら腕が軟体化する』

「二個、個性があるなんて凄い」

緑谷くんの言葉に私は否定的になってしまったが、隣にいた峰田くんが何か言いたげな顔をしていた。

「その水って飲めるのか!?」

『やったことないけど飲めるんじゃないかな?』

「オイラ、脱水になったら轟の……!!」

梅雨ちゃんの舌が峰田くんの頬をおもいっきり叩き、すごい音が響いた。私は思わず梅雨ちゃんに声を掛けようとしたが、
「氷炸ちゃん、何も言わなくていいわ」
と言われたので静かにその言葉に従った。

次は峰田くんの個性を説明してくれたが、その個性をどう使うか緑谷くんと話していると峰田くんが涙ぐんで叫んだ。

「だから言ってんだろ!!おとなしく救けを待とうってよお。オイラの個性はバリバリ戦闘に不向きな〜!!」

フォローしようと緑谷くんが回ろうとしたが、私のすぐ横を敵の攻撃が入り船が割れた。右腕を掠めてしまったが、3人に見えないようにした。これ以上不安を作ってはいけない。


「うわぁぁ!!」

やけになった峰田くんが髪をもぎると、敵に向かって投げた。ヤバいと思って敵の様子を見たが警戒しているようで触らなかった。

敵の言葉で峰田くんは泣き叫んでから、私の足にしがみついた。

「この間まで中学生だったんだぞ!入学して殺されそうになるなんて、誰がおもうかよ!!せめて八百万のヤオヨロッパイに触れてから……あと、轟の脚にオイラを挟まれてから」

気持ちが悪かったので、足に炎を纏わせると峰田くんはささっと離れる。私は緑谷くんの言葉に耳を傾けた。

「"敵が勝利を確信したときが大きなチャンス"昔、オールマイトが言ってたよ」

緑谷くんの震えている手が印象深く残った。

「勝つには……これしかない」
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