壁の大きさ

□4話
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「焦凍、氷炸、今日早く行くからお弁当作れないけど……大丈夫〜?」

台所からお姉ちゃんの声が聞こえた。私は歯磨きをしながら、前で顔を洗う焦凍を待っていたので焦凍に返事してもらおうと肩を叩いた。

「俺、昨日の夜に弁当の具材作った」

焦凍が作るなんて珍しすぎて、私は口の中を水で急いで濯ぐ。

『焦凍、料理できたっけ?』

「焦凍ー!氷炸ー!聞いてるー?」

お姉ちゃんが急いでるのか、私たちに返答を求めていた。焦凍はお姉ちゃんに話しに行き私は顔を洗う。
お姉ちゃんは仕事に行くと、私はその焦凍のお弁当のおかずを別けてもらおうと台所に赴く。

そこには、タッパに入った焦凍が好きなそば。そして、汁を入れただろうビンが一人分だけ用意されていた。それをテキパキと詰めていく焦凍の姿。

私はそば、あんまり好きじゃないけど。



「俺、先行くから」

毎日、焦凍は先に学校に行ってしまうけれど毎年の事だから慣れた。小学生の頃は一緒に学校まで行っていたけれど、高学年になってからかわれてからは一緒には行っていない。

一人で駅まで向かって学校までの電車に揺られる。満員電車の中、端に押されると目の前に見たことがある赤い髪が見えた。

『あ、切島くん。おはよう……っ!』

「おはよう、って大丈夫か?」

私が手摺に頭をぶつけた所を見られて心配された。恥ずかしいけれど、昨日の私の行動はもっと切島にしてみれば恥ずかしかったらしい。

「そういえば、轟。もしかして昨日もこの電車乗ってたか?」

『うん、この電車だよ。どうして?』

「いや、昨日の朝、雄英の制服着た轟っぽい女子がいてさ、もしかしてって。まだあの時、全然お互い知らなかったからな」

目の前の切島くんはとても笑顔で、私を人混みから守ってくれようとしてくれていた。よく、切島くんの顔を見れば目元に傷があって、ふとどうしたのか気になった。

『この傷どうしたの?』

「へっ…!?あ、あー……小さい時に個性で傷つけてさ……あの、轟」

どうしたのかな?と思ったら、顔を真っ赤にした切島くんは私と目を合わさずに逸らしながらこう言った。

「そこの傷……触られんのめっちゃ恥ずかしいんだけど」

そ、そうだ!確かになぜ私は彼の目元を触って話しているんだろう。気になりすぎて、確かに自然な感じで触ってしまった。

『ご、ごめんね……』

そこから気まずくなって、私は外の景色を見て、切島くんも外の景色を見ながら学校の最寄り駅まで向かう。
駅を降りて歩いていると、学校の前には報道陣が凄い数。

切島くんと歩いていたけれど、それを見た私と彼は足を止めてしまった。

「なんだよ、あれ」

『マスコミだよね』

あの中を突っ切るしか手段はない。
少し早足の切島くんと私はマスコミの中を歩く。

「オールマイトの授業を受けましたか?」

「オールマイトのイメージはそのままですか?」


オールマイトの話題ばかりだ。それに切島くんは少し戸惑っていたけれど黙々と歩いてその後に私は続く。マスコミが押し掛けてくるのは、恐いイメージがある。
門を抜けると、二人でため息を着いた。

「ヒーローになったら、マスコミだらけかぁ。俺、堪えれる気しねェ」

べっと舌を出した切島くんが可愛く見えてしまいふっと笑ってしまった。そのまま、教室に向かえばみんなもマスコミの話をしている。

「私は答えなかったわ」

「答えなかったんだ!私、答えたよ〜」

『答えたの!?マスコミ怖くなかった?』

「こう、ぐいぐい来るのは嫌だけどね」

芦戸ちゃんと梅雨ちゃんと朝の話をしていた。色んな話をしていると、実は切島くんと同じ中学校だと言うことがわかって驚いた。

「いやぁ、切島と氷炸。仲良くなってるのも驚きだよ?」

梅雨ちゃんがケロッと同感の声を出して、私を見た。いやいや、たまたま同じ電車で……と話しているとチャイムが鳴った。


ホームルームの最初は、相澤先生が昨日の戦闘訓練の評価を爆豪くんと緑谷くんに言って、声のトーンを落とした。

「さてホームルームの本題だ…急で悪いが今日は君らに……」

何か嫌な予感がして、みんなが体を強ばらせる。

「学級委員長を決めてもらう」

「「『学校っぽいの来たー!!!!』」」

ほっとしたため息がみんなの口から溢れているけれど、やはり雄英。みんなが委員長になりたくて手を挙げていた。私も挙げている。

「静粛したまえ!!」

大きい声が聞こえた。その方向を見れば、名前は確か……飯田くんがみんなを静めていた。

「民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら……これは投票で決めるべき議案!!」

まだ日も浅いのに、信頼関係が築けていないのに大丈夫なのかな。

絶対、自分に入れると思うけど……。
みんなから、私と同じ事を飯田くんに伝えているが、相澤先生に関しては時間内なら何でもいいらしい。


投票の結果、緑谷くんに3票、八百万さんに2票……委員長は緑谷くん、副委員長に八百万さんという形で収まった。



授業を受けてお昼休み=ご飯。お弁当は結局持ってこなかったけれど、誰と食べようか周りを見回した。

芦戸ちゃんと梅雨ちゃんは、お弁当だったらしくて、食堂で食べようてしているのは麗日ちゃん、緑谷くん、飯田くんが仲良さそうに向かっていっている。

「轟ちゃん、うどん食いに行こーぜ」

救世主!!声の主は昨日、うどんを食べようと誘っていた上鳴くんだ。轟ちゃん、という焦凍と区別できる分かりやすい呼び方をしてくれてありがたい。
チャラいのがちょっと苦手だが隣には切島くんが居ていた。

「爆豪も誘いたかったんだけど、なんかあんな調子だから……」

爆豪くんの方を見れば、目が凄い形だった。あれは目なのか不思議だったぐらい。


爆豪くんを置いて、私たちには食堂に向かう。人が物凄く多いけれど、うどんを頼めばすぐに来たので回転率はいい。
だしの匂いが良くて、油揚げの甘い匂いがする。あ、幸せ。


「めっちゃ幸せそうな顔」

上鳴くんは私の顔を見ていたのか……。すごく恥ずかしい。恐る恐るきつねうどんを持って席に着くと、いただきますをしてから食べる。


「めっちゃ飯テロ」

「俺、きつねうどんにすれば良かった」

ヤバイ!きつねうどん美味しすぎる。想像していた以上に美味しい。
ふと、目線を上げればご飯を食べずに私を見ている二人の姿。


『どうしたの?』

「「ごちそうさまっす!!」」

『まだ食べてないのに?』

訳がわからないまま、汁まで飲み干す。美味しかった!今から食べ始めた二人は食べ終えた私を見て話題を振った。


「そういえば、もう一人の轟は弁当持ってきてたよな?」

上鳴くんはなんでだ?と聞いてくる。

『あれ、蕎麦なの。いつもお姉ちゃんが作ってくれてたんだけど、仕事が早くて作れなかったから。焦t…もう一人の轟は昨日の夜に蕎麦湯がいてたらしくて。もともと持っていくつもりだったんだって』

「蕎麦好きなんか……二人揃って麺系かぁ」

「つーか、お姉さんいてるって初耳。お姉さん絶対美人。轟似?それとも轟ちゃん似?」

上鳴くんが私の顔をガン見していて、切島くんが間に入るように止めろよと言っていた。



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