壁の大きさ

□1話
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それから、ヒーローになるためにはどうすればいいかを調べることにした。
というけれど、母が隠れながら買ってくれたオールマイトのDVDを焦凍と観たり、誕生日に貰ったヒーロー本を読んでいた。


わからない漢字は母に聞くか、姉に聞けばわかった。


焦凍に追い付くためには、今焦凍がやってることを2倍頑張らなくては……幼いながらも私はひらがなでメモを取ってやることにした。


まずは、体の強化。弱いとすぐやられるのは目に見えていたので、ただの腹筋とかじゃなく廊下を雑巾で拭いて往復何回とか掃除しながらやった。

それでも、焦凍は日々傷が増えていて泣いて部屋に戻ってくることが多くて。しんどい、痛いと私に弱音を言っていて、私よりももっと遥か上の事をしているんだとその当時の私は痛感した。


それからも、一人で個性を使ったりして焦凍に追い付けるように頑張っては、焦凍を励ましては自分を鍛える毎日を送っていた。





ある日、私がお風呂を個性を使って沸かしていると焦凍の悲鳴が聞こえた。
(台所からだ!)

走って台所に行けば、左目を抑えて転がる焦凍。そして母。母はただ顔を手で覆い座っていた。

『焦凍!どうしたの?焦凍!!』

必死に焦凍に聞けば、左目を隠していた手を退けて痛いのか服をぎゅっと握った


その騒ぎに父が来たが、私は焦凍の左側を見てわかった。
急いで右手から冷たい水を出して焦凍の左側を冷やす。

父は何か言っていたが、痛い痛いと叫ぶ焦凍が放っとけずに冷たい水を火傷の部分に当てていたので何を言ったかわからなかった。


病院に行った焦凍。母はなぜか居なくて理由がわからなかった。寝るときも一人で寂しかったし焦凍が寝室に帰ってきたのはたぶん日付が変わる前だったと思う。
私の方に来たのか、背後に気配を感じた。


「氷炸、ありがとう」


水を当ててた事にお礼を言ってくれているのだろうか……そう思いながら寝てしまった。



次の日に父から急に呼び出された。と言うものの朝から叩き起こされた。


「なぜ、個性が二つあるのを黙っていた?」

目を父に向けながら聞いていたが、あまりにも単純な質問で小さかった私も呆れて目を反らした。

『個性が二つあっても、出来損ないって言われるから』


「何を言ってるんだ。個性が二つ出ないから出来損ないなんだ。お前は炎と水を操れる二つの個性を持ってるだろう。氷が出なくても炎と…」


『二つでも、氷には水は負ける!!』


ギリっと下唇を噛んだので血の味がした。



『私は、強くなる』


眠気が無くなって私は父に背を向けて寝室へと向かい着替えた。


その心中は父に出来損ないと言われて悔しかったのを思い出して、私は荒々しかった。


毎日、体を鍛えて道場から盗み見した事をやったり姉を背負って走ったりと色々な鍛え方をした。



私は母と姉に言われた言葉を思い出しながら、父を見返そうという思いとヒーローになるため……






それが私の目標


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