壁の大きさ

□1話
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「お前たちは最高傑作だ」


いつの日か、父親からそう言われていた。まだ、本当に小さくて物心がつくかつかないかぐらいだったと思う。
私の弟、焦凍と二人で父親の言葉を聞いていたがなんのことかさっぱりわからなくて首を傾げていた

私たちは、5人兄弟で兄が二人と姉が一人。そして双子の私達。

姉や兄とたちは髪の色が白か赤、それか白に赤が少し混じったような髪色をしている。だが、私たちは半分が赤で半分が白という髪色。
焦凍は顔の半分で別れているけど私は、毛先から赤、白、赤、白となっている。


姉や兄と遊ぼうとすれば、なぜか父が勝手に割り込んできて止めるから焦凍と二人で遊ぶことが多かった。


この世には個性というものがあって、五歳ぐらいで発現する。

私の個性の発現は、積み木で遊んでいたら急に左手が熱いと思えば火が積み木を囲んで燃えていた。急いで消したけど、あれはビックリした

個性の操作は操れなくて、父に黙っていたら食事中思わず手が発火してしまった。驚きすぎて泣きそうになっていると父が言葉を発した。


「それだけか」


『え……』


チリチリと音を立てている火が止まった。母は父を宥めるように声を掛けるが聞いていないようで席を外して去っていった


「なんだ、最高傑作だと思ったが火だけか……焦凍の個性発現はまだか?」


「ええ……でも、氷炸だってきっと…」


「また、前と同じような…出来損ないか……」


食べ物が美味しくないと感じたのは、それを聞いた時だった。悲しいよりも悔しかった。
なんで、私は突き放されたのか、そしてそれから、父は焦凍にだけ希望を抱き始め私は見向きもされなくなった。


「熱い…冷たい…」


『しょうと?』


焦凍の両手からは、火と氷が出ていた。そこで私は気付いた。

父親が欲しかったものって火と氷が両方欲しかったんだ。炎しか出せない私なんか要らないんだ。





それから、焦凍と遊べなくなった。無理矢理、父が焦凍を連れていく。寂しい気持ちの中で炎で焦げた積み木を手に取って遊んでいた。

「氷炸、いっしょに遊ぼう」

『おねえちゃん』


姉達と一緒に遊び始めた。サッカーをしたり、おままごとに付き合ってくれたり。

そんな時、急に個性が暴走して左手からボッと大きな炎が出て庭の草に飛び火してしまった。

驚いて尻餅を着いて、煙で目が霞んで目を掻こうとしたときに冷たいものが右手から伝わった。
見てみれば、水がポタポタと落ちている

左手からは火が出て、右手からは水。

焦凍は火が出て氷が出るのに、私は氷じゃなくて氷が溶けた冷たい水……それで父親は私たちを突き放した。


悔しい


消火すれば良かったのに、私は泣いていた。その声に気付いた姉が炎を消火して泣き止まない私をぎゅっと抱いてくれた


「氷炸、泣いたらダメ!個性、凄いんだよ!私が出せない火も出せる。水は人にとって一番大切なもの……氷炸は平和のヒーローになれるよ!」




私は嬉しかった。姉の温もりを感じて涙の雫が止まった。




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