Novel2
□凍える指先に君の体温
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吐息ごと凍えてしまいそうな夜。
冬の夜空は格別に澄み渡り、星が切ないほどに輝いて見えた。
吸い込む空気の冷たさに、空に糾弾されているような気にすらなる。
馬鹿げた事を。
そう思っても、明瞭な星の瞬きはただ美しいだけのモノにはみえなくて。
伸ばした指先は、痛い程に冷えて行く。
「アスラン」
愛しい人の呼び掛けに振り向けば、琥珀の瞳が自分を映す。
その頬に、手を伸ばしかけて一瞬戸惑う。
愛しい人の、
限りなく澄んだその瞳。
そんな俺を見て、彼女は困ったように小さく笑い、俺を引き寄せながらゆっくりと瞼を綴じた。
それに誘われるように、柔らかな頬に手を添える。
冷たさに僅かに震えたその仕種が、やはりどうしても愛しくて。
そっと唇を寄せる。
「カガリ…」
彼女の指先が強く俺の上着を掴む。
ただ、それだけで胸の内から暖まる気がした。
愛しい人。
どんな星より輝いて、俺の心を照らす人。
口づけは、冬の夜空を刹那に焦がしていった。
END