素敵小説

□わずか一瞬のときめき
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「何かしら」

すぐさま彼女はメッセージを読もうとした。しかし――ロックがかかってるのか、電文を開くことが出来ない。
それはエターナルから発信されたもの。この頃は三隻間での電文のやり取りも、ザフトや連合のハッキングを警戒して、メッセージに暗号ロックをかける様にしたのだが……これはかなり強力だ。

「苦戦してるじゃねーか」
「うるさい」

ミリアリアは集中し、かけられたロックを解こうとするものの、中々上手くいかない。
外そうとしては失敗し、解けたと思えばエラーが起き……

「〜〜ちょっと貸せ!」
「え?!」

一向に解ける気配の見えないプロテクト。見かねたディアッカは、思わずキーボードに手を割り込ませる。
その瞬間――突然伸びる腕に、ミリアリアの心臓は、わし掴まれるような衝撃に支配された。

一瞬だけ。

そんなことなど露知らず、ディアッカは真剣な面持ちで、片手でキーを叩きながら、モニタを注視する。

「何だよ、このプロテクト。新手の嫌がらせか?」

そう言いながらもディアッカは、幾重にもかけられたロックを、鮮やかな手付きで解除していく。
ミリアリアは……思わず見入ってしまった。
真剣なディアッカの顔は、あまり見たことがない。その上、彼女が全く歯の立たなかったプロテクトを、どんどん外しているのである。

<……すごい>

素直に、そう感じざるを得ないディアッカの姿。
恐るべき速さで解除されていくそれは、数分と経たないうちに、全て外された。

「よっしゃ、全クリッ!」
「ゲームじゃないんだから」

ため息をつくと、ミリアリアは姿を現した電文を読み……

「あんたちょっと邪魔」
「え」

お礼の前に、そんな言葉が飛んできた。仕方なくディアッカが避けると、ミリアリアは席を立ち、電文を印刷にかけ、それをマリューへと渡しに行く。
口頭で伝えなかったところを見ると、急ぎの伝達――というわけではなかったらしい。

……急ぎの用件に、あんなプロテクトをかけられても困るが。

マリューが電文を読み、クルーに指示を出し……ブリッジに中は、急に慌しくなっていく。
それを遠巻きに眺めながら、ディアッカは言った。

「サイ、俺戻るわ」
「もういいのか?」

彼が来た理由を事細かに知ってるサイにとっては、驚くべき発言だった。
ディアッカがブリッジに入って、まだそんなに時間は経っていない。ミリアリアとは、話すらまともにしていないのに。

「さすがに、なあ」

苦笑がもれる。
ディアッカだって、仕事を邪魔しようとして来たわけではない。ただ……ここ数日、ミリアリアと顔を合わせることが出来なかったから。


どうしても会いたくなって、来てしまっただけだから……


忙しさを見せるブリッジで、彼女の仕事の邪魔をするわけにもいかない。
あきらめ、ディアッカは扉へと進み――

「あ――ディアッカ!!」

呼び止めたのは――ミリアリア。

「ありがとね」
「――ああ」

一瞬、驚く。
ミリアリアにお礼を言われるなど、滅多に無いことだ。

「またこーゆーことあったら、遠慮しないで呼べよ」

言ってディアッカは、あのポーズを見せた。
出撃の際、ミリアリアにだけ送る儀礼。
指で作った『平和の象徴』を、自分からミリアリアに送る、あの仕草を。

「じゃ」

シュンッ!!

重たい空気の音と共に扉が開き、ディアッカはブリッジを出た。
一歩だけ進んで、扉が閉まった音を聞いて、彼はその場にうずくまる。

「あー……新しい作戦でも考えなきゃダメだな、こりゃ」

それはもちろん、対ミリアリア用の作戦。これまでの勇猛果敢なアタックが全く効いていないとなると、角度を変えた攻め方をしなければ、到底歯など立ちそうもない。
今回の一件で、彼女が自分の事を見直してくれれば話は別だが……期待できるほどの効果があるとも思えない。
ディアッカは自分の置かれている現実を見据え――寂しそうに格納庫に戻っていった。
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