ゆりとゆうき

□そろそろ夏休み!
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今日から7月。
とあるふたりのお子さまの頭はもうすでに夏休み気分。
なにしようだの、どこへいこうだの話し合ってる。

「今年の夏は絶対逆上がりできるようになる!」

鉄棒の前に立って強く決意したこの元気な男の子。

かにかまと、ささくれを引っ張るのが好きな小学3年生、佐藤勇気君。

じゃあ、わたしはー、うーん、、うんていが端までいけるように頑張る!」

ブランコで立ちこぎしてるこの明るい女の子。

昼ドラと光るものが大好きな小学3年生、池内百合ちゃん。

家が近所な二人は小さいときからずっと仲良しで、今日も学校が終わってすぐに公園に来てあそんでいるのだった。

「そういえば百合ちゃん、今年も夏休みの工作のやつやるの?」

勇気君が鉄棒で唯一できる前回りばかりをやりながら、今日学校で、
毎年夏休み前になると配られる工作のカタログをもらったことを思いだし百合ちゃんに聞いた。

工作をするかしないかは児童の自由だが、百合ちゃんはそのカタログをずっと楽しみに待っている。

一年のときは、光るスーパーボールを作るキット。

二年のときは、光るバラを作るキット。

光るものばかりを作ってる。

「やる!今年の工作のやつ、光るスライムを作れるってのがあったんだよー」

今年も光るやつだ。
目をキラキラさせながら答える百合ちゃんに少しあきれる勇気君。

「また光るやつー?百合ちゃんの部屋光るやつばっかじゃん!ここ、田舎なのに百合ちゃんの部屋だけニューヨークだよ!」

「なによ!その目ー、あたしの部屋そんなに光ってないよ!勇気くんの部屋は逆に暗すぎだよー!あれじゃ墓地だよー」

「ぼ、ぼち?」

百合ちゃんの部屋はとても明るい。
特に夜になるとまるでディスコのようにキラキラ光る。

毎年夏になると新たな光り物がいくつも追加される。

去年の夏祭りでも、光る鳥の笛を三つも買って全部首からかけ、キラキラ光らせていた。それだけではすまされず光るわっこを首のつく場所すべてに取り付けて。ほぼ、彼女の体全体が光っている状態であった。

これは、百合ちゃんの祭り装備だ。

「勇気くんの家、夜行くとお化け屋敷みたいに暗いじゃん」

「お化け屋敷じゃないよ!歴史があるっていうんだよー」

勇気君のお家は、とても広くてとても古い。
そのお陰で、二人が鬼ごっこだのかくれんぼだので走り回っても全然問題ない。
ただ、たまにジャンプするとギシギシいってることが気になるところ。
両親はいつも勇気君と百合ちゃんに歴史があるからだよーなどと教えつけて古いって言わせないように頑張ってるけれど。
実際夜になると本当に幽霊屋敷のように見えない訳じゃない。

「まあ、確かに迷路みたいで楽しいときもあるけど。夜はちょっとさぁ、、
あの、開かない扉からなんかでてきそうだしい」

百合ちゃんは立ちこぎをやめてブランコに座ると、鉄棒をやめた勇気君が横のブランコに座った。

勇気君は何かを思い出したようにハッとして、

「そういえば!昨日ね、うちの開かない扉の向こうすこし見えたんだー!」

「ええっ!」

二人の言う開かない扉とは、佐藤家の奥にある鍵のかかった扉の向こうの部屋のこと。入れないようにこれまた古くさーい錠で閉ざされてる。
勇気君もお母さんとお父さん、おじいちゃんやおばあちゃんが入ったところも見たことないらしい。

お子さま二人にとって、秘密の場所というのはロマン溢れる場所でありどうしても見たくなるもの。

しかしその部屋には窓はなく外からのぞくこともできない。

何度も扉を開ける挑戦をするが、お母さんにしかられて開けられずにいた。

あの扉が開いたの?!
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