欅坂小説

□予想以上
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志田side


とんっと背中に軽い衝撃がかかる。


「・・・理佐?」
わざわざ確認しなくても分かる。匂いと感触で。あ、別に変態じゃないよ?



「どーしたの?」
後ろを向こうとしたけど、お腹に回された手の力がぎゅっと強くなったせいで出来なかった。


「・・・さっきの。」


「・・・ん?」


「ショールーム・・・、の、さ。」


「あぁ、『愛してるゲーム』ね。」


「・・・う、あの・・・。」


「ほっぺにキス、嫌だった?」


「っ!!」
見えないけど、きっと顔赤くなってるだろうな。



「・・・・ほっぺじゃなくて、ですね・・・。」
そこまで言って、もごもごと口ごもる理佐。
何が言いたいのか分かってるけど、ちゃんと理佐の口から聞きたいから、あえて分からないふりをする。

「・・・・ほっぺじゃなくて、」
ぎゅうっとお腹に回した手の力をさらに強めて口ごもっている。




「なあに?」



「・・・・・口に・・・してほしい、です。」
たっぷりの沈黙の後、密着したこの距離でやっと聞こえる位の声量で言った。しかもなぜか敬語で。


「ふふっ。いーよ。」
理佐の拘束を解いて、向かい合う。予想通り・・・いや、予想以上に顔が赤くなっている。
ショールームでされたお返しのつもりで、理佐の頬に両手を添える。ぎゅっと目をつぶってぷるぷる震えてる姿が可愛くて、顔の筋肉がゆるゆるになるのが分かる。

ちゅっと音を立てて軽くすると、物凄い勢いで離れて行く。



「何で逃げるの?」
じりっと距離を詰めても、その倍の距離を取られる。

「・・・別に。」
耳まで真っ赤で、目は潤んでて。じりじりと距離を詰めても一向に近づけない。


「ふーん。ま、いいけど。」
そう言って追いかけるのをやめる、押してダメなら引いてみな作戦に出た。そうすると、これまた思っていた以上に食いついてくる理佐。





「・・・・もう一回。」
私の手首を掴んで俯きながら言うから、今度は顎をくいっと持ち上げてもう一回。
今度はちょっと長めにする。


「・・・人前ではほっぺまでにしてね。」
照れ隠しなのか分からないけど、ぶっきらぼうな言い方で言って来た。



「うん、大丈夫。理佐の可愛いキス顔を私以外の人に見られるなんて耐えられないから。」


「・・・なっ・・・んっ、」
何かまた言われそうだったから、その前にもう一度口を塞ぐ。出来心で唇をぺろっと舐めると、ぐいっと肩を押された。




「・・・愛佳のばか!!変態!!」
ちょっと裏返った声で叫んで、脱兎のごとく逃げて行く理佐。


「ふふっ・・・かわいー・・・。」
にやにやしている私に、通りかかった茜とふーちゃんが生温い視線を送ってきたのはスルーしておこう。



END

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