欅坂小説
□いちごみるく
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渡邊side
「いひゃい・・・。」
舌をぺろっと出しながら言った愛佳。
「辛いもの、得意だったんじゃないの?」
「想定外の辛さだったの・・・。」
そう言って眉を垂れ下げながら、ロイヤルミルクティーを飲んでいる。・・・気持ちは分かるよ。辛いもの食べた後って、甘いもの食べたくなるもんね。現に私も今、飴を舐めて痛みと辛さを相殺している。
「あ〜・・・いひゃいよ〜りさぁ〜・・・」
ぎゅっと抱きついてすりすりしてくる愛佳。よしよしと頭を撫でてあげると、嬉しそうに目を細める。・・・猫みたいで可愛い。
「さっき茜も病院送りになってたし、この企画危な過ぎない?」
「それはあの特攻食いのせいでしょ・・・。」
先ほど茜が見せた特攻食いは、メンバー全員に凄まじい衝撃を与えた。
「まぁそのおかげで、友香と茜がさりげなくいちゃいちゃしてたの見られて可愛かったから、結果オーライ。」
なかなか不謹慎な発言をする愛佳。まぁ確かに・・・激痛に襲われながらも、しっかり友香の手を握っていた茜も見上げた根性だ。
「理佐は、私が茜みたいになったら手握ってくれて病院付き添ってくれる?」
急に上目づかいで聞いてくる愛佳。私がこういうの弱いって知っててやってくるあたり、タチが悪い。
「・・・さぁ、どうだろ。」
ドキドキ言い始めた心臓の音を誤魔化すように、ちょっと愛佳の身体を離す。
「え〜!!何もしてくれないの!?」
「愛佳、うるさい。」
「むぅ・・・。」
耳としっぽが付いていたら、きっとしゅーんと垂れ下がってるだろうなっていうくらい、あからさまに落ち込んでいる。
「愛佳。」
「ん?・・・んん!?」
名前を呼んでから、そっと唇を重ねる。ちょっと強引に舌を捻じ込んで、一緒に舐めてた飴を愛佳の口内に入れる。
「あげる。」
きっと顔が赤くなってるだろうから、ちょっと横を向きながら言う。
「・・・・いちごみるく・・・!!」
表情は見えないけど、愛佳の声のトーンが明るい。
「・・・・これくらいはしてあげる。」
「理佐ぁ〜〜!!!!」
「愛佳、うるさい!!」
またぎゅうっと抱きついてきた愛佳に、今度こそ心臓の鼓動と身体の熱がばれるから、それを誤魔化すように叫んだ。
END