欅坂小説

□複数恋愛主義者の苦悩
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志田side




先日のチャプチェ・・・失礼。キャプテンによる欅坂相関図は、私のメンタルに甚大なダメージを与えた。



「うぅ・・・理佐ぁ・・・。」


「ちょっと、私は理佐じゃないんだけど。」



「いーじゃん、ちょっとぐらい。私、茜のことも好きなんだもん。傷心中の私を慰めてよ〜。」
理佐の代わりに・・・失礼。同じぐらい好きな茜にぎゅーっとくっついていたら怒られた。


「本当は理佐が一番なくせにー。」
呆れたようにため息をつきながらも、お腹に回した手を優しくぽんぽんと叩いてくれる茜。


うん、やっぱり茜のこと好きだわ。




「ねぇ茜、私と付き合わない?」


「はっ!?」



メンバーの贔屓目を差し引いても、茜は美人だ。軍曹と呼ばれるほどの負けず嫌いっぷりを発揮する一生懸命さとか、ダンスが苦手でも努力で磨いてきたし、なんだかんだ言っても、こうして優しくしてくれるし。

今のところ独り身でいるのが信じられないぐらい、魅力的な人なのに。


「だって、茜独り身だし、いいじゃん。」

「ちょっと、独り身って言い方やめてよ。」
けらけらと笑う茜の声が、背中にくっつけた耳から直接伝わってくる。



「私は複数恋愛主義の人とは付き合えませ〜ん。」
そう言って私の腕をぱっと解いて逃げて行ってしまう。
急に寂しくなった腕の体温を埋めようと、むきになって追いかける。


本気では逃げていなかったみたいで、すぐに捕まえることができた。



「そんなに私のこと好きなんだ。」
捕まえた茜が満面の笑顔で言う。

「もちろん!!」
それに間髪いれず答える私。これはもしや・・・茜ゲットだぜ!!みたいな展開?



「じゃあ、証明してみて?」


「・・・・は?」


「証明って、何を、どうやって?」
何のことを言っているのか分からず、ただ聞き返す私に、今度は小悪魔的な笑みを浮かべた茜が言った。


「だから、志田の愛を証明できる事をして?・・・・・・・例えば、キスとか。」






「・・・・・・・・・・。」


「ねぇ、聞いてる?」
こてんっと首を傾げた茜可愛いな。いや、そんなことを考えている場合じゃなくて。・・・・・今なんと?


「私のこと好きならできるよね?キスぐらい。」
いやいやいや、ぐらいってなんだよ、そんなん理佐ともしたことないわ!!・・・・・したいけど。じゃなくて!!!!!!


「えっ・・・と、」
急に恥ずかしくなって俯くと、愛佳は可愛いねって、ぽんぽんと頭を撫でられる。
子供扱いされたみたいで悔しくて、顔を上げて茜の顔を両手で包む。

薄く笑った茜がゆっくり目を閉じる。
その仕草も綺麗で、思わず見惚れそうになるけど、精神力を総動員して平静を保つ。

ゆっくり茜との距離を詰めていく。


うわ・・・睫毛長い。鼻筋通ってるし・・・肌綺麗・・・。近づけば近づくほど心臓がバクバク言って、全く見当違いなことを考えてしまう。プチパニックになりかけて、堪らずにぎゅっと目を閉じた。


ちゅっという可愛い音と共に触れた感触に、温度に、顔だけでなくて体中がかぁっと熱くなる。



離れながらゆっくり目を開けると・・・そこにいたのは


「・・・理佐?」

「おはよ、愛佳。」




「え・・・何で理佐が?今日はモデルのお仕事でしょ?合流はもっと遅いはずじゃ・・・。」


「んー?早めに終わったから、愛佳に会いたくて急いで来たのに、あかねんと何かしてるからつい、ね?」
そう言う理佐の後ろには、おそらく押しのけられたであろう茜がいた。


え、ちょっと待って、今私がキスしたのって・・・。

「愛佳からのキスをもらっていいのは私だけだから。」
にこっと嬉しそうに笑った理佐。爆発するんじゃないかってぐらいの勢いで、バクバクとすごい音を立てながら心臓が鼓動を上げる。



「え・・・あ、わたし・・・理佐・・・と、」
何とか状況を飲み込もうとした私に、理佐がとどめを刺した。



「しちゃったね、キス。しかも人前で。」
もう一回にこっと笑った理佐の笑顔と言葉に、思考が追い付かなくなった。

そのまま、ぐいっと腕を引っ張られて、空き部屋に連れてこられた。




「ねぇ愛佳、さっきはあかねんだと思ってしたでしょ。だから今度はちゃんと私だってことを分かった上でしてよ。」

「り・・・さ・・・ちょっと待って、色々追いつかないっ!!」
全然情報が理解できず、理佐に待ったをかける。

「してくれないなら私がするからいいよ?」
そう言って両手をそっと頬に添えてくる理佐。


「あああぁぁぁあ!!!待って理佐!!!するから!待って!!!」
頬に添えられていた両手を掴んで、理佐の拘束を逃れる。

ふぅっと軽く呼吸を整えて、理佐の顔を見ると、ふふっと淡く笑ったあと、ゆっくり目を閉じた。


デジャヴ・・・。
そう思いながらゆっくり理佐との距離を詰めていった。




END
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