star×me
□1.暗青の月
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広い甲板の上。
日光と潮風を浴びながら助けてもらったのは五分前のことだ。
そこで見たのは見覚えのある面子。
ああ神様。
トリップしてたりねっていうのは思いつきの冗談なんですけど…!
「わしはジョセフ・ジョースターという。漂流していたところを発見できて良かった」
「…彼方朝陽です。助かりました」
「発見したのはそこにいるアヴドゥルだ」
「怪我もなく、健康そうで本当に良かった。ここから陸まではかなりの距離があって危険だからな」
「あ、ありがとうございます」
ジョジョの奇妙な冒険。
頭の中に、中学生の頃に一通り読んだことのある漫画を思い浮かべた。
今私がいる世界、三部からはスタンドっていうのが主流になってたと思う。
登場人物はスタンドを駆使して敵を倒してて…正直あんまり覚えてない。
頭の中でいろいろと情報を整理しても、現実が受け止められない。
そろそろ目眩がする。
「一体どうしてあんなとこにいたんだ?身なりからして何かから逃げてきたわけでもねえだろうしよ」
「…信じられないかもしれないけど、目が覚めたら船の上にいて。なんであんなところにいたのか、全くわかんなくて」
「…まあ無事で何よりだな。仲良くしてこーぜ。
オレはポルナレフっつーんだ」
「うん、ありがとう」
さすがポルナレフはフレンドリー。
さっそく肩を組まれて親友宣言までされてしまった。
その様子を見ていたジョースターさんとアヴドゥルさんが笑う。
余裕のある大人のメンバーに囲まれて介抱された後、ホットコーヒーを押し付けられてしまった。しぶしぶ飲んでいると安心感からか、やっと落ち着いてきた。
いや…落ち着いてる場合じゃねえ……!
何呑気にスタクルメンバーと合流してんの!?
ちゃっかり自己紹介までしちゃったよ!?
ポルナレフとは気楽に肩まで組んじゃったわ…。
前世でどんなことしたらこんな人生になるんだろう。
来世に期待しておこう。今世はダメだ。
なんか異世界に飛ばされてんだもの。
意味わかんねえよ。
「顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?」
「平気平気。混乱してるだけで。気にしないで」
「そうか。大丈夫ならいいんだ。
僕は花京院典明。君と同じ日本人だよ。よろしく」
「よろしく」
癒しだ…花京院は癒しだと思う。
優しいよ君は。
日本人ってだけでこんなに安心できるんだね。
希望が見えてきました。
「あそこに寝転んでいるのがジョジョ。空条承太郎っていうジョースターさんの孫にあたる人。無愛想だけど悪いやつじゃないから、仲良くしてやってくれ」
「ありがとう」
主人公はどうやら私に興味がないらしく、私が引き上げられてからもずっと動いていない。
死んでるんじゃないかと思ったけど、花京院が言うには寝ているだけらしいので安心した。