◆私だけの新荒(旧)◆

□《奪われた第二ボタン》
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黒「荒北さん!」
真「荒北さーん!」

ふいに背後から声を掛けられた。
荒北は振り向く。

黒田と真波が立っていた。

荒「よォ、どした」

二人の方を向く荒北。


黒「荒北さん!オレ……」
真「第二ボタンください!」

荒「ハァ?」


黒「真波!テメなんてことを!」
真「ください!第二ボタンオレにくださーい!」

黒「オレだって欲し……いや、そんなこと言いに来たんじゃねっス!」
真「荒北さんの第二ボタンまだ付いてる!オレに!それオレにください!」

黒「黙ってろ真波!テメェが喋るとややこしくなんだよ!」
真「だって早くしないと誰かに奪われますよ!いいんですか黒田さん!」

荒「なに言ってんだオメーら……」

真「オレ先にもらいますから!」
黒「んだとテメっざけんな!どけ!オレが先だ!」

荒北に急に猛突進してくる二人。

荒「ウワァ!!」

恐怖を感じて荒北は逃げ出した。

黒「荒北さん!」
真「荒北さーん!」







体育館裏の倉庫の陰に逃げ込んだ荒北。

荒「ハァハァ……」

息を整える。

荒「なんなんだアイツら全く……」

バタバタバタバタ!

その時、誰かが飛び込んで来た。

見つかった!
荒北は身構える。


新「靖友?」
荒「!」

顔を上げる荒北。
飛び込んで来たのは新開だった。


新「ハァハァ」

新開は荒北の顔を見てホッとしたように微笑んだ。

髪や制服がボロボロになっている。
修羅場になって逃げて来たのだろう。


新「あー、参ったよ」

倉庫の壁にもたれかかり、息を落ち着かせる新開。


荒「よく逃げて来れ……ア?」

荒北は新開の制服を見て、驚いた。


荒「オメ……第二ボタン……」
新「ん?」


新開の第二ボタンが……付いていた。


新「ああ、これ?ははっ。死守した」

新開が笑いながら答える。

荒「死守……」

新「靖友だって、まだある」

新開が荒北の制服のボタンを指差して言う。

荒「オレは……別にあげるヤツなんか居ねーし」

新「そう?じゃ……」


ぶちっ!!

荒「!!」


新開が手を伸ばして、荒北の第二ボタンを引き千切った。


新「やった!靖友の第二ボタンゲット!」

荒「な……!」

新開の唐突な行動に唖然とする荒北。


ぶちん!

荒「!」

新開は次に自分の第二ボタンを引き千切った。


新「はい」

荒北の手を取って自分の第二ボタンを握らせ、ニッコリ笑った。

荒「……!!」

荒北は驚いて声も出ない。


新「それ、オレの気持ちだから」

新開は頬を赤らめながらそう言った。

荒「気持ち……」


新「靖友。オレ、毎晩メールするよ。新居決まったら教えてくれな。オレもすぐ教えるから。なんなら合鍵だって……」
荒「オイ!いったい何言って……」

立て続けに話し出す新開を慌てて遮る荒北。

新「靖友」

新開は荒北の両肩に手を置いて、じっと目を見詰める。


新「オレの第二ボタンを渡す相手は、おめさん以外考えてなかったよ。卒業式の日に告ろうって、ずっと思ってた」
荒「告……」

新「今まで言わなかったけど、大学、離れ離れになっちまってオレすげー寂しい。だから大学行ってからも頻繁におめさんに会いたい」
荒「……」

思いがけない新開からの告白に、真っ赤になる荒北。


新「オレの第二ボタン、もらってくれる?靖友……」

荒北の目を覗き込んで尋ねる新開。


荒「お……おゥ……」

耳まで赤く染めて、荒北は新開のボタンをギュッと握りしめた。







黒「あ!いた!荒北さん!」

倉庫裏から出てきた新開と荒北を見付ける黒田と真波。


真「……!!第二ボタンが!!」
黒「うわああああ!!」

新開と荒北の第二ボタンが無くなっていることに気付き、頭を抱える二人。

真「黒田さんがモタモタしてるから!!」
黒「うあぁぁああぁぁあああ!!」





卒業おめでとう。





おしまい



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