隣の三日月くん
□心配
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「あ。おはよう」
「おはよう」
玄関を出ればちょうど三日月も同じタイミングで出てきていた。
「朝錬は?」
「今日は部活はなしだ。昨日試合だったから今日は休むようにと」
門を出て少し一緒に歩く。
「そっかぁ。それはそうとお疲れ様。三日月すごかったね」
「ああ、来ていたのか」
「友達の付き添いでね」
「来ていたなら声をかけてくれてもよかっただろうに」
「そんなことできないよ。三日月に声かけるの待ってたら日が暮れちゃう」
なんて冗談めかしていったが、大会の時を思い出してうんざりした。昨日もなんでお前がいるんだよという視線を向けられていたのを必死でスルーしていたんだから。
「はっはっはっ。そうか、それは残念だ」
彼女たちのことをあまり悪くは言いたくはないが、怖すぎる。今このやり取りですら私にとっては平穏を壊しかねないのだから。
私たちはある程度の地点まで来て別れた。じゃあね、と私は言って三日月から30mほど離れた後ろを歩きながら学校に向かう。
面白いことに磁石と砂鉄みたいにファンの子たちがどんどん集まっていく。
そんな後ろ姿を眺めながら三日月は人並みの恋愛ができるのだろうか、ふとそんなことを思った。
いらんお世話だと言われればそうなのだが、彼だってもう高校生だし、今までに一人や二人は思いを寄せた子がいるだろうに。というか、そもそも彼女がいたこととかあるんだろうか?
三日月ほどの有名人だと、そういう噂のひとつやふたつあってもいいものだと思うんだけどそれも聞いたことがない。
彼は今この状況をどう思っているんだろう。不自由に思っていない?辛くない?無理してない?聞きたい気持ちはあるけれど、それは私から聞き出すことじゃない。それに三日月にも友達はいるし……。
「でも、なんか心配なんだよね」