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□誰にも言いたくない
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先日、平野藤四郎から修行に出たいと申し出があり、今朝彼は旅立った。この本丸にはたくさんの刀剣がいて、遠征に出たりするがそれとは訳が違う。なんとなく眠る気が起こらない。そわそわして落ち着かないからと、縁側で一人ぼんやりとしていると足音が聞こえ、##NAME1##の近くで止まった。
「寂しいかい?」
鶴丸だった。彼は飄々としているようで物事をよく見ていて、それに伴って行動するところがある。今日もそうなのだろう。##NAME1##の変化に気がついていて様子を見に来たようだった。
「うん。それに…」
「心配、か」
「うん」
##NAME1##は俯き、手をぎゅっと握る。こんなところ男士たちには見せられない。見せてはいけないとわかっているのに、言葉は止まらない。
「修行に出てからまだ1日経ってないぞ?きみは随分と過保護なんだな」
鶴丸はふっと笑い冗談交じりで言った。
「かもしれない」
否定は出来なかった。どの男士も彼女にとっては大切な存在だ。
「なぁに、あいつなら大丈夫さ」
すとっと鶴丸が##NAME1##の横に腰掛けた。
「親ってこんな気持ちなのかなって思った」
「うん?」
鶴丸はあまりぴんときていないようだ。##NAME1##はふと両親のことを思い出し、鼻がつんとした。
どんな気持ちで審神者になる家を出た私を見送ったのだろうか。今ならなんとなくわかる。
「我が子の成長を願いつつ喜びながらも、それがなんだかすごく寂しいっていう」
「複雑な心境だな」
鶴丸は静かに##NAME1##の言葉に耳を傾けた。
「そう。背中がね、すごく頼もしかった。戦に行く時とは別の感じ」
「そうか」
「こんなこと言ってたって誰にも言わないで。恥ずかしい。それに私、情けないって思われたくない」
##NAME1##はぐすっと鼻を啜った。そんな彼女を自分の胸に閉じ込め頭を撫でた。
「言うもんか……」
そんな姿、俺だけが知っていればいい。