ある本丸の話
□鳥
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「あの鳥はなんというのでしょうね」
「雀ではなさそうだな」
「そうですよね。色は似ているのですが」
ふと縁側を散歩しているとそんな声が聞こえた。声のした方へ向かえば、前田君と大典太さんが並んで座っていた。
「何してるの?相変わらず仲良いね」
と声をかければえへへ、そうなんですと笑う前田君マジ天使。大典太さんは少し恥ずかしそうにしている。
「鳥を見ていました。主君はあの鳥の種類、わかりますか?」
「んー?」
目を凝らして鳥を見る。小さい姿がひょこひょこ動いているのがわかる。確かに小鳥は可愛い。それを眺める前田君も可愛い。
「あれはモズだね」
「モズというのですね!勉強になりましたね、大典太さん」
「ああ、そうだな」
「よく二人並んで何しているのかと思えば鳥を見てたんだねぇ」
微笑ましくて顔がにやけてしまう。
「はい、そうなんです。ここなら静かで色んな鳥が見られるので」
にこにこという前田君やっぱり天使。
「そっか。だからこの場所なんだね」
よくこの場所で二人並んでいるところを目撃する。しかも本丸内では特に静かなこの場所にいる。何も無いのになと思っていたがそういうことだったのかと納得した。おそらくだけど、内番の際に鳥に逃げられてショックを受けた大典太さんを気遣って離れた場所でなら大丈夫ですよと言って前田君が声をかけたのだろう。大典太さん生き物好きそうだからなぁ。
「あ。じゃあ、前田君に図鑑を買ってあげようね」
「えっ」
「あと巣箱とか餌置く台とかも買うかー」
私は庭を見ながらあの辺りにあれを置いて、巣箱はあそこかなと大体の位置を決める。
「主君そんなっ」
焦る前田君もまじ(ry。まあまあと頭をなでなでし落ち着かせる。
「遠慮しなさんな。せっかく人の身を手に入れたんだから戦う以外のこともやってみたら良いと思うよ。そういうのも大事でしょう?」
うむーと考える前田君を見てあともう一押しだなと思い、口を開く。
「せっかく見るなら種類もわかったほうが楽しいじゃない。私もすべての種類知ってるわけじゃないからさ。大典太さんもそう思うよね?」
「お、俺は……どちらでも」
「ほらー、大典太さんもその方がいいと思うってさー」
勝手な解釈をしたが、多分、結構興味あるんだろうなぁと思える反応だ。
「しゅ、主君と大典太さんがそこまでいうのならば……」
「よしよし。じゃあ注文しよう。その代わり二人には組み立てと設置を手伝ってもらおう」
「任せてください!ね!大典太さん!」
「……ああ」
前田君はキラキラとした表情ではりきっている。一方の大典太さんは普段よりも少し嬉しそうにしているような気がした。
「じゃー今すぐ行ってくるわ。届いたら作業開始ね」
ありがとうございます!とぺこりと頭を下げた前田君は楽しみですね!と大典太さんに話しかけたいた。私はそれを横目で確認し、思わず微笑んでしまった。
数日後、あの場所にもう一度行けば、図鑑とにらめっこする二人がいた。微笑ましいなと思った。邪魔してはいけないような気がして静かにその場を立ち去った。その日の夕方、二人がスケッチした鳥の名と絵がかかれた紙がが執務室に置かれていた。私はそれを執務室に飾った。