ある本丸の話
□なんだかんだ言っても
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「大倶利伽羅ー」
「……」
無視されるかと思ったが、ちゃんと振り返って止まってくれた。
「え、なんでそんなあからさまに嫌な顔するの。ショックなんだけど?!」
すごい嫌そうな顔だったけどね!!
「自分のしたこと忘れたか?」
ギロリと彼女をにらみつけた。
「うっ!」
やばい、あの目は真剣必殺出そう!でも引き下がるわけには行かない。せっかく大倶利伽羅が好きそうなお菓子屋さんを見つけたんだから!この前の謝罪も兼ねてのお誘いだ。
「…それで、なんだ」
なんだかんだいって一応用件は聞いてくれるんだな。少しは打ち解けてくれているのかな。
「買い物付き合ってくれない?」
「忙しい。他を当たれ」
「……」
やっぱりかとうなだれる。
「慣れ合うつもりはない」
こうもばっさりと断られてしまってはどうしようもないかと諦めることにした。あまりしつこいのもよくないよね。この前のこともあるし。
「……忙しいなら仕方がないよね。うん。ごめん。それにこの前のこともあるし、ね。別の人誘うよ!ごめんね、引き止めて。大倶利伽羅の好きそうなお土産買ってくるからさ、それくらいは受け取ってよね」
大倶利伽羅のこういうところに慣れてきたとはいえ、やっぱり居た堪れない気持ちになり、じゃっと立ち去ることにした。
「あ、おい…!」
パシッと腕をとられ、驚いて彼を見た。
「大倶利伽羅?えっ?」
「部屋で待ってろ」
「え?」
「すぐに終わらせて迎えに行く」
待ってろという代わりに頭をぽんとし、どこかへ向かった。
「あ、はい……?」
驚いてしばらくぽかんとしていたが、ハッとして動揺した。落ち着くために自室へと慌てて戻った。
あの大倶利伽羅がデレただとーーーーーーーーーーーー?!しかも頭ポンって!ポンって!!!
私はにやける顔を抑えることが出来なかった。
「伽羅ちゃん、今日はじゃがいもの皮むきお願いするね」
「光忠、早く終わらせるぞ」
厨に来て開口一番に発したのはこの言葉だった。
「え?うん?うん!」
普段は手伝いのために厨に入って来てもああとかそうかと無表情で言われるだけの彼に驚いていた。
「……」
言葉は発しないが何なんだと不機嫌そうにする。
「伽羅ちゃん何か良いことあった?」
光忠はにこやかに聞いた。
「別に……。手を動かせ」
少しそわっとした様子で話題を逸らした。
「ふふっ。わかったよ」