ある本丸の話
□慣れずに倒れる
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「はあ、つらい…」
「おい、何してる」
「ほっ!?あ。山姥切か」
山姥切が廊下を歩いていると角でこそこそと何かを覗いている我が本丸の主を見つけた。
うっとりと陰から覗いている彼女はストーカーと言われ、職務質問されてもおかしくないほどあやしい。その証拠にすれ違った秋田と五虎退が主は何か病気なのではないかと話していた。
「見て、うちの本丸に三日月宗近がいるよ」
ほわっと頬を染めて笑顔で言う彼女は恋する乙女みたいだなと思うが、行動派変質者以外のなんでもない。
「いい加減慣れろ」
はあと盛大にため息をつき、呆れた目線を送る。
ちなみに、三日月が来てすでに一週間は経っていた。
「無理」
「……」
(即答されてしまった)
「はあ…」
山姥切は本日二度目の呆れた目線を向けた。
「おや。そこにいるのは主か?どうしたんだ?」
「んひっ!」
話し声で気がついたのか、元から気がついていたのかわからないが、三日月がこちらを向き主に声をかけた。
「む?あ!」
三日月は何かを考え、ひらめいたようなしぐさをした。
「?」
三日月はきりっとした雰囲気を纏い、
「主、近うよれ」
と言い放った。
「ンあああありがとうございまーす!!!」
バターン
そう言い残して主は倒れた。
「あ、おい!」
慌てて彼女を抱き起こすと幸せそうな顔で気絶していた。
「はっはっは!いや、笑っている場合ではないか。大丈夫か、主?」
そのあと、長谷部が通りかかって大騒ぎしたのはいうまでもない。