西尾維新系

□鳳凰&左右過去模造(小説)
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「お初お目にかかる、相生忍軍の青年よ」

あの頃から、我はこの口調だったろうか。だとしたら、相当生意気なわっぱであったろうな。

そう、夢の中で考える。

だが所詮夢だ。昔のままを見ることなど出来まい。

我の考えは、愚考に終わろう。

「――こんにちは、見知らぬ坊や」

愛想は良くなかったように思う。一瞥を向けただけですぐに彼は俯き、我を意識から弾いた。

だが、二つ程歳の離れた彼に、我は不快を感じなかった。

それも、彼の性格故なのだろう。

「我は坊やではない。『鳳凰』という、呼ばれるに恥じない立派な名がある」

「そうか。では鳳凰君、どこかにね。 ――ここには、何も無い」

「貴方が居る」

「私は居ない」

その頃の彼は、髪が短かった。

生まれついてなのだろう、色素の薄い茶色の髪はざんばらで、汚かった。

「そうか、貴方は居ないのか。 では、我が見ている貴方は何だ?」

「君は何も見ていない。君は何も見えていない」

そんなことはない。

我には一つが見えている。

我が愛しき、忍者の里が。

そうして、もう一つ。

「我は孤児みなしごだ。共に暮らしてくれると、嬉しい」

こう言われると断われぬ、優しい優しい

被写体が。

「……ふむ。私と似て非なるの者なのだな。 私は×××。一人者同士、気兼ねなくやっていこう」

彼は一体、何と名乗った?

いや、これは憶えている。今思い出せずとも、夢から覚めたら思い出そう。

このとき、我は内心でほくそ笑んだのだった。

名乗る必要なんてない。

しっかりと、調査してあるのにと。

「有難い。我はまだ幼き故、一人で暮らすには厳しいことが多いのだ」

「だろう。 それは何故か、教えてやろうか?」

あぁ、わかった。愚考する必要はなかった。

我は昔から、童が使うには生意気な、この口調だった。

「いった!! なっ、何故殴る!?」

我を殴った拳を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返しながら、彼は我を、やっと視界にいれてくれた。

それでいい。

我が彼を殺すには、実力が足りぬ。

我は十二で彼は十四、五。

この年頃の男子は、これだけの年齢の差だけでも、大分体格差が目立つ。

だったら、精神を殺そう。我がほしいのは、共に暮らす仲間ではない。

彼そのもの。

多きを率いてゆくに最たる、社会性。

信用してくれ、信頼してくれ。

我はそれを裏切り表切り、貴方自身を切り裂こう。

「お前は、生意気だ。その口調と態度をどうにかしろ」

そんな必要、貴方になれば、、、、、、必要はないのに。

かなり面倒くさがったっけな。

そうしたら、その顔を見てまた殴られた。

我は調べたときには解らなかった彼の暴力性――否、そこまで評すは酷か。

とにかく。

完璧ではなかった彼に、失望もしたし、

同じ人だったと、安堵もした。



不思議な夢だ。

ここまでは、楽しかった……うん、楽しかった。頃の記憶。

どうしてこの次、すぐあそこまで飛ぶ?


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