西尾維新系

□花言葉
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いっそ綺麗で猟奇的でグロテスクな赤が僕は好きだ。

花言葉
ジョキジョキ、シャキン、、、チョキ、シャキン。
刃物の擦れる音、刃物の擦れる音、刃物が何かを切る音、刃物が擦れる音。
夜景の綺麗な、数十階はあるように見える高級そうなホテルの最上階の部屋にはそんな不釣合いな音が響いていた。

そこに響く声もまた、不釣合い。
「トキ、何してるっちゃか?」
低い、不機嫌そうな声がベッドの上から部屋の端まで届く。
これもまた声に不釣合いな可愛らしい口調だ。
「生け花をはじめてしてみているのだが――ふむ、悪くない」
対する声は、男性にしては高めである。
優雅、と言ってもいいかもしれない。優れた雅な声だ、歌うとさぞや美しい声音となるだろう。
「いや、どこからどう見ても悪いっちゃ」
だが、やっている生け花を優れて雅、そして美しい作品につくりあげることはどうやらトキと呼ばれた彼――曲識にはかなわなかったらしい。
「アス、君とは感性があいそうにない」
「奇遇っちゃね、俺もそう思った」
アス――軋識は、やはり不機嫌そうにベッドに身を沈める。陥没した部分の代わりに舞い上がる純白の布団を見つめながら、曲識の手は止まらない。
そんな事をしているから「悪い」と言われる作品にしかならないことに彼は気づいているのだろうか。

「というか、チグハグすぎるっちゃよ、それ」
「何がだ?」
「色もバラバラ、種類もバラバラ、大きさもバラバラ。ちゃんとした知識があったらそれでも綺麗にできるんだろうけど、素人なのに冒険しすぎっちゃ」
「悪くない」
「だぁから、悪いって……」
しつこく口癖を繰り返す弟分に、うっかり口調を崩してしまう。
どうせ作られた口調だと彼は知っているのだから、別段今更気をつけることはないのだけれど。
「しかし、『色がバラバラ』というのは違う」
「ん?…あぁ、よく見ると赤が多いっちゃね………吐き気がする」
よく見なければ、確かに気づけない。ショッキングピンクやピンクベージュ、オレンジまであるが、確かに赤系で統一されている。
茎の緑と相まって、少しクリスマスを思い出してしまうが――それ以上に、赤で思い出す変な奴が居る。
「そうか?僕は好きだ」
「俺は青が好きなんだよ」
青…と、上を向きながら曲識は呟いた。
「青い花…何かあるか?」
「…………ほんっと、何でお前生け花なんてしたんだよ。ブルーローズとかデモフィラとかアルカネットとか色々あんだろ」
「詳しいな。だが補足だ、ブルーローズは実際は染色が主であり自然にあるものではなく、成功してやっと紫といったところまでしか開発は進んでいない」
「…お前の方は詳しいだろ。というかトキ、お前、昔から赤好きだったっけ?」
「さぁ、どうだろうな」
スっと視線を外し、窓際を見る。
「好き……好きか。そうだな、好きだよ…恐らく。だがこんな感情も、悪くない」
「――はぁ?変な奴…って、零崎に真ともな奴なんていねぇか」
クツクツと喉を鳴らして笑う。
「変な奴? …それもまた、悪くない」
「少なくとも普通の人間なら、偶然会った奴の借り部屋になんて入ってこねぇよ」
「家族だろう?」
揚げ足をとられたようなかたちになってしまった軋識は、口を尖らせ「そうだけど…」と一言呟くが、二の句を紡げなかった。
「お前、僕が好きか?」
「………気持ち悪い質問だな」
「純粋な意味で、だ」
「よくわからんな、お前は本当に。まぁ、好きだな」
「そうか、僕は君が嫌いだ」
「オヤクソクな『僕もだよ』がなくて俺は安心すればいいのか沈めばいいのか、本当にわからない」
家族に対するには酷すぎる発言だった。
「では、沈んでいるように見えるアスに花を贈ってやろう」
「…脈絡がほんっとないな、お前は」

諦めたように笑う軋識の隣を通り――
曲識はトイレに入っていった。

………。
……………。
「脈絡ねぇにも程があんだろっ!!?」
思わず叫んでしまった彼に「程なんてない」と落ち着いた声がかけられる。
見えたのは、やはり声同様に落ち着いた顔。
「ほら」
「――消臭剤?」

「臭いぞ、アス」

「ぶっ殺す!!!」
本気で此の場に釘バットがないのが残念で堪らない、けれど素手でも戦れないことはないだろう。
零崎をはじめてやると意気込んだ軋識に、まるで鎮静効果でもあるのではないのかというような声がかけられる。
「冗談だ」
ほら、ここをよく見ろと、紫色の容器の一番目立つ、花がかかれている部分を指差した。
「あん?」
そこに書かれているのは、「ラベンダーの香り」。
――それがどうした。

「ラベンダーはアスの花だと僕は思う。青が好きなのだろう?」
「は?ラベンダー…なんで?」
以下以前、何で俺は消臭剤なんて家族からプレゼントされてるんだ。
それもホテル備え付けの。

「花言葉がな、『忠誠と献身』というんだよ」
心臓が大きく、血液を逆流させたのではないかというほどに、震えた。
な、んで…。
「他にも『繊細、優美』とかあるが、アスの柄じゃないからな……」
「――はんっ。じゃ、俺からも一つ、送ってやるよ――

 ヘリオトロープ。どうだ?」
「いや、知らん」
「知識偏りすぎだろっ」

――意味は、『愛よ永遠に』。



花言葉って結構一つの花に色々ありますから、ちょっと自信ないんですけどね。^^;
ヘリオトロープの花言葉は他に『熱望』もあります。結構っぽいかなって思った。
『献身』もありますが(笑。あの二人は結構似た者同士だと思うのですよ。
うっすらきっしーは曲兄ーさんが誰かに惚れてるのに気づいてるといい。彼はいい兄貴。
青薔薇の研究、どこまで進んでるんですかねー?自分は詳しくないんですがorz。ちょっと昔の話と思えば不自然ないよ☆←
めさんこ久々に文を書きました元自称字書きです☆←
グダグダになってしまい軽く後悔。ギャグに走る癖は抜けないんだz(殴。
――タイトルが花言葉になった理由は、メモ帳に向かい合ってるときにガゼの花言葉聴いてたからだなんてことは決してないですよ?



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