西尾維新系

□深夜十二時三面鏡(小説)
1ページ/1ページ

あいつは鏡の裏側。
あいつはぼくの、まさしく鏡像。

鏡像であり、虚像である、


何時ぼくの前から消えたって、可怪しくないだろう?


深夜十二時三面鏡

あなたは知っているだろうか?
マイナーな、小学生が好むような怖い話だ。

《深夜十二時、三面鏡の前に立つと異世界への扉が開く》

さて。
異世界とは、どんな世界なのだろう?

『異』常な『世界』なのだろうか。
『異』質な『世界』なのだろうか。

まぁ、そんなのはどうでもよくて。
そんな夢物語の妄想、現実を生きるぼくには関係のない話だ。

その現実の定義すら、最近ぼくは危ぶんでいる。

「なぁいーたん、暇〜」
「知るか。楽しいことなんて滅多にないし、我慢しろ」
コイツが、ぼくの傍に何時も居る。
見ているだけで吐き気がするのに。
「じゃぁさ、出かけねぇ?これじゃ引きこもりと変わんねぇぜ」
深夜に外に出ているのは、正直少ないと思うのだが…その時間が、零崎にとっては活動時間らしい。
だけど、ただでさえ狭いぼくの部屋で活動なんてできるわけもなく、彼はゴロリと寝転がって、ぼく以上に寛いでいやがる。
ムカついたので、その白い頭を軽く蹴ってみた。
「――んぁ? 何だよいーたん、もしかして『楽しいコト』=『殺し合い』になっちゃった?」
「そんなワケあるか、出夢君じゃあるまいし」
「アイツの名前出すなよ――」
ウゲッと呟き、不機嫌を隠そうともしていなかった。
「それに、もう遅いよ。今から出かけて開いてるところなんて、少ないと思うけど?」
「ふっふ、それに関しちゃ抜かりねぇぜ」
右手の人差し指と中指を立て、他の指は全部折る。俗に言う「ピースポーズ」だった。
こいつがやったら、そのままのいきおいで目を抉られやしないかと、やたら不安になってしまう。
「オケ!往かねぇか?24時間営業の店、見つけたんだ。奢ってやんよ」
零崎とカラオケに往くのは、二度目だったりする。 あの、むいみちゃんの事件のとき以来だ。あまりいい思い出ではない。
好きと言う割には、あまり歌、上手くないしね。
「――ま、いいよ。付き合ってあげる、眠くならないから」
ぼくの言葉に、彼は嬉しそうに微笑んで、言った。
「素直じゃねーなぁ」

零崎が奨めてきたカラオケ店は、案外近くにあった。看板に堂々と『24時間営業中』とある。
ぼくはあまりカラオケに往くのが好きじゃない(というか、五月蝿いところは嫌いだ)から知らなかったけど、実は24時間営業は珍しくないとか。
ただ、サービスや店員の愛想まで含めるとマトモに来れるのはここだけだ――と、いうことらしい。
零崎は、本当にぼくの分のお金まで払ってくれた。ありがたいことだ。 しかもフリータイム。――深夜なのに。
「んで、いーたん何歌うよ?個人的なオススメは『キューティーハニー』とか『Yes!プリキュア5』なんだけど」
「そんな下らない手には引っ掛からないからな!」
こいつはぼくを何だと思っているんだろう。そこらへんのアニメを、ぼくが網羅していないとでも思っているのだろうか。
「ちぇっ、面白くねぇなぁ」
「お前が『撲殺天使ドクロちゃん』歌ってくれたらぼくは『持ってけ!セーラー服』を歌ってやろう」
「明らかに俺のがリスクデカくないっ!?」
歌詞が案外猟奇的。ぼくは零崎には相応しいと思うのだが、本人がそれを拒否してしまった。
「気のせいだと思うよ?だってぼく早口苦手だし」
「戯言遣い失格だぁな、それじゃ」
かははと笑って、結局先に零崎が歌うことになった。

歌ったのは、やはりあのひたすら叫ぶ洋楽のような歌だった。

それから二時間程度。 ぼくはまだ一曲も歌っておらず、零崎の独壇場と化していた。
「――んじゃ、そろそろ、いーたんのリクエストを聞いてあげちゃいましょうかねぇ?」
「もしかして、ドクロちゃん? まだ憶えてたんだ」
それにもかははと笑って、「当然」と言うと、ページを繰りはじめる。そして、番号を入力。

聴くに耐えなかった。
やはりあの歌は、可愛い声でなくては聞くに耐えないのだと、ぼくは実感した。ぼくは莫迦だ、あの声で歌われるとどうなるか、想像にかたくなかったのに。
ぼくが目を瞑って我慢していると――唐突に、声が聴こえなくなった。ただ、伴奏だけが走り続けている。
「………零崎?」
不安になって、ぼくは目を開ける。すると――
ぼくの目に、ぼくの顔が映った。
「!? ぜっ、ぜろ「ンな何回も呼ぶな、気持ち悪ィ」
瞬き一つすると、瞬時に変わったぼくの世界。 不機嫌そうな赤いまなこが、ぼくを見つめていた。
「どうしたよ、一体。目ぇ瞑ってたからよ、寝てたのかと思ったぜ」
それは違う、お前の歌が酷かっただけだ。
「――眠いなら、帰っか? つか、俺が眠ィだけだけどさ」
また、「かはは」と笑う。

勿論、その申し出をぼくは引き受けた。
ぼく等は、当然帰路を同じくした……が、彼は、骨董アパートの前でぼくに軽く手を振った。
「んじゃな、いーたん。もう二度と会わねぇことを祈ろうぜ」
とか言いつつ、毎度来るのはお前じゃないか――とは、あえて言わない。
言って機嫌を損ねられたら、もう二度と来ないかもしれないかもだし。
「あれ、泊まってかないの?」
「いや、寝るスペースなくね?狭いんだしさ。 寂しいってんなら泊まってやんだけどな」
「寧ろ邪魔かな」
ぼくの発言に少し眉を顰めるも、それ以上の反応はなかった。
「ふぅん、ならいーよ」
それだけ言って、彼は去っていった。
あまりにも、あっけない別れだったけど、多分、再会はこれ以上にあっけないのだろうと、ぼくは予測する。


あいつは鏡の裏側。
あいつはぼくの、まさしく鏡像。

鏡像であり、虚像である、


何時ぼくの前から消えたって、可怪しくないだろう?



零崎は、本当にぼくの裏――いや、もしかしたら、表なのかもしれない。

だって、あいつの顔を見るだけで、吐き気がするってのに。


どうも、近くに居てくれないと安定しない。


多分、あいつもそうなんだろう。
だから、何だかんだでぼくの近くにくるのだろうと思う。

深夜十二時三面鏡。
三面鏡の前に限らず、ぼくは十二時になったら、彼に会いに行こうと思う。


そうしたら、一日中一緒に居れると思わないか?



何か――話の収拾がつかなくなるというのは小説書きとして、かなり致命的な弱点だと思いますorz。
最初のテーマ「深夜十二時に三面鏡で異世界へ」みたいな都市伝説みたいなのをテーマに零ぼく書きたかったのですが、失敗。
「ぁ、二人のカラオケシーン書きたい」ととちゅうで思ってしまったのが原因です。
ぼく→零止まり。いつかリベンジしたいです。

ちなみに、私は本気でドクロちゃんの歌は人識クンソングと考えてます(笑。是非歌詞をご検索下さいまし☆



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ