テイルズオブシンフォニア
□過去編
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木々の葉が風に揺れざわめく。
『いい風だ』
森の中の1番大きな木の枝に座り、その木に実るユミルの果実をシャクシャクと齧じった。
色とりどりの蝶が、花から花へと移りゆくのをボーッと眺める。
ひたすら研究資料を読み漁る日々も楽しいが、たまにはエルフらしくこうしてぼんやり凄くのも悪くない。
最後の1口を飲み込んで残った芯の部分をポイっと放り投げた。
「いて、」
そんな男性の声が随分、下からした。
「なんだコレは!?ゴミ!?」
「プッ!上からゴミが落ちてくるなんて、日頃の行いが悪いんじゃない?」
男性の驚きの声と、男の子がケラケラと笑う声が聞こえる。
「こらこら、あまり笑っては可哀想よ」
「ふむ。鳥が森に住む動物食べて落とした、にしては食い口が大きいな……魔物か?」
男の子に注意する女性の声と、先程の男性の声より更に低い別の男性が冷静に分析する声が続いた。
『ああ。すまない、それを落としたのは自分だ』
「なっ、誰だ!?」
どこから声がする!?と私が放り投げた果実の芯が当たった男がキョロキョロと当たりを見渡す。
「落としたと言っただろう。上だ」
声の低い方の男がそう言って森の木々を見上げる中、少年と女は顔を見合せた。
「姉様。この声とこの喋り方…」
「えぇ」
「ウェズー!」
名を呼ばれたので、まるでブランコから降りるかのように、腰掛けていた木の枝からするり、と飛び降りる。
と、いってもこんな高さから飛び降りて着地できる程、運動神経が良かったり肉体が強靭だったりするわけではない。
『アクアプロテクション!』
魔技という、詠唱をせずに体内で変換したマナを簡易的に打ち出す技で、水のクッションを体の回りに纏い、落ちた衝撃を和らげる。
地にぶつかり、水のクッションは割れ辺りに水しぶきが飛んだ。
「うわっ、」
見事に、飛び降りた先にいた青い髪の男性に飛んだ水しぶきがかかっていた。
『あ、すまないね』
「ウェズー!」
タッタッタッと駆けて金髪の男の子が抱きついてきた。それをぎゅっと抱き返す。
『やぁ、ミーくんおかえり。それにマーちゃんも』
若草色の髪の女性にもそう声をかければ、彼女たちはただいま、と笑って見せた。
「知り合いか?」
そう少年に問うたのは、茶髪の声の低い男性。
「ああ。紹介するね」
そう言って抱きついていた腕を解いて、男性の方に向き直した。
「ウェズだよ。この森を抜けた先のヘイムダールに住んでるんだ」
『そう。この先にヘイムダールに住んでいる訳だが、君たちは何故、この森の中にいるのかね?この先はハーフエルフ禁制だよ』
そう言って、姉弟と青髪の男性を見る。
「やはりエルフはエルフか」
ギロリと青髪の男性はこちらを睨みつけた。
『酷いな。忠告しただけなのにそんなに睨むことはないだろう?』
「大丈夫よユアン。彼女は私たちハーフエルフを差別したりしないわ。本当にただの忠告よ」
「む…、信じ難い……」
「まあ、今までのエルフたちからの仕打ちを考えたら当然だけど」
ユアンと呼ばれた男性が渋い顔をすれば、ミーくんはやれやれと手を挙げた。
「だからって、エルフだからと一纏めに見て睨み付けるのはやめた方がいいよ。それだって差別と変わらないもの」
「なっ、」
どう見ても歳が10以上離れているミーくんの方が大人な発言をしていて、ユアンとやらは、言葉を詰まらせた。
「ところで、貴殿は先程、ハーフエルフの立ち入りは禁制と言っていたが……。つまり人間は踏み入っても構わないのか?」
茶髪の、この4人の中で唯一の人間である彼が疑問をこちらにぶつけてきた。
『ん、君は賢いね。そうだよ。人間とは友好的関係を築きたいんだそうだ。貴重な外の情報源としてなんだろうがね』
それにしても友好関係を築いた後、間に生まれたハーフエルフを差別するのは全くもって私には理解出来ないのだがね。人間とも敵対していて、ハーフエルフを嫌うなら分かるが。たった数人のハーフエルフたちが、魔科学を世界に広めてしまったが為に後のハーフエルフたちが、このような仕打ちを受けているのは大変可哀想にある。
「クラトスが人間であることが役立つ時がくるとはな」
鼻につくようにユアンがそう言うが、クラトスと呼ばれた彼は別になんの反応もせず、ミトスの方に話を振った。
「それで、どうするのだ?私だけが、村に入り話を聞いてくるのでも構わないが」
「あ、もう村に入る必要無くなったから大丈夫」
ん?と思わず首を傾げれば同じようにクラトスも首をかしげた。
「目的の方から来てくれたからね」
「では彼女が、精霊研究をしている、という」
「こいつが?」
驚いたような顔をしてクラトスとユアンに見つめられた。
『自分に会いに来たということしか話しが見えないが。まずは人間とハーフエルフが一緒にいる疑問から聞く方がいいのかな?』
「ああ、うん。長くなるけどいいかな」
エルフの一生と比べたら、数十分でも1時間でもほんの少しの時間なので、もちろんさ、と頷いた。
戦争を止めたいんだよね
そのために、精霊の力を借りたいんだけど…、そう言った彼が考えた提案に、思わず口をぽかんと開けた。賢い子だとは思っていたが、これは…とんでもないことを思いつたな。