テイルズオブシンフォニア
□過去編
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現行のシルヴァラント王朝とテセアラ王朝によるマナの争奪戦。私の両親によれば、この戦いは1000年以上前から続いているらしい。
長寿のエルフの民である2人が言うのだから間違いないだろう。
私が産まれる前から、始まったこのくだらない戦いは、人間達とそれに知識を与えたハーフエルフたちのせいで魔科学が発展し、2つの国がエネルギーであるマナの奪い合いを始め、その戦争に魔科学を使いマナの消費を早めた結果、大地のマナが枯渇しマナを産む木、大樹カーラーンまで枯れた。
マナを産む木が無くなった事により余計に両国でのマナの奪い合いが余計に酷くなり、1000年もの間後ずっと戦いを続けているらしい。
私や両親と同じエルフの民たちは、ユミルの森という地で、戦争には関与せず琉球の時を過ごしているが、無駄な争いを続ける人間達を愚かに思い、またマナを消費させるように人間に入れ知恵をしたハーフエルフ達を忌み嫌っている。
そもそも大樹カーラーンというのは、我々エルフ達の祖先がデリス・カーラーンと言う慧生から、この地に移住した時に、移植したもので、その木がもたらしたマナから精霊が生まれ、そこから人間やドワーフが生まれた。それを枯らされたとあっては、怒るのは致し方と思うが……。
『でもぶっちゃけ魔科学は便利なんだよなー』
マナを使って魔法に変換する力がある、私でもそう思うのだから、魔法の使えない人間たちからすればとてつもなく便利であろう。
まあ、エルフ達の村、ヘイムダールの中でそんな事言ったら、避難の嵐だろうけど、ここはその村を囲うユミルの森を抜けた先、余程の物好きなエルフじゃなきゃ森の外まで来やしない。
「ウェズは、エルフなのに変わってるね」
そういったのは金髪を長く伸ばした少年。
彼の体内を巡るマナは、私たちエルフとは違い、また人間たちとも違う。2つを掛け合わせた特別なマナ。
エルフと人間の間に産まれた子供、すなわちハーフエルフである。人間の好奇心とエルフの長寿、そしてエルフよりも優れた魔力を持つと言われ、それ故にどちらからも差別され疎外されている。
『自分が変わっているのではなくて、ヘイムダールのジジババ共の頭が硬すぎるのだよ。そもそも人間に魔科学を与えたハーフエルフは1000年も前のヒトなのに、当事者でも無く、まだ年端も行かぬ、ミーくんやマーちゃんをハーフエルフだと言うだけで村から追い出すのはおかしいだろう』
「年端って、私はそこまで子供ではないけれど」
そう言って、若葉色の長髪の女性が困ったように笑う。この子がマーちゃんで、さっきの金髪のミーくんのお姉さんである。彼女もまたハーフエルフである。
「でも、それがおかしいなんて言ってくれるのはウェズだけよ」
「みんなウェズみたいな考えだったらいいのに……」
しゅん、とした様子のミーくんの頭をよしよしと人撫でする。
『すまないね。自分にもっと力や権限があれば……』
「ううん、ウェズはボクと姉様を助けてくれたじゃない。ボクらだってもっと力があれば……。世界を変えるほどの力があれば……」
『世界を変える力か…。そう言えば最近隕石が落ちてきたという話があっただろう?』
そう言えば、最近?と2人は首を傾げた。
「何年か前、ミトスがもっと幼かった頃に人間たちの街に隕石が落ちたって噂は聞いたことがあるけれど……」
もしかしてそれのこと?とマーちゃんに言われ、多分それ、と頷く。
「長寿のエルフの感覚だと、数年前も最近になるんだね」
『君らも今は若いからそうでもないだろうけど、エルフの血を引いてるんだ。自分の事を笑えなくなるぞ』
エルフほど長生きしないが、それでハーフエルフも人間とくらべればとんでもなく長い寿命を持つ。時間の感覚が分からなくなるのなんてあっという間だ。
『結構時が経っているのなら、隕石の研究も進んでいるかもしれんな』
「その隕石がどうしたの?」
『変わった鉱物が混ざっていて、生命反応があるものがあるとかないとか聞いてね』
「どういう事?」
『最初は精霊のように目に見えない姿で、その隕石にいるのではと言われていたが…、後の研究結果がどうだったかまでは耳に入ってきていないな』
そもそも閉鎖的なヘイムダールでは、他の街や人間やハーフエルフたちの話などほとんどはいっては来ない。
「ウェズの耳に入ってないって事は、精霊は関係なかったんだろうね。関係してたら飛んでそれを見に行ってたでしょ」
『ははっ、そうだな』
長く生きる上で、何も考えずダラダラと生きると、ヘイムダールのジジババのように凝り固まった思考になると、始めた精霊についての調査。私たちエルフよりも更に悠久の時を過ごす精霊ならば、私が死ぬまでに調べ尽くす事はないんじゃないか、と思っている。
最初は暇つぶし感覚で始めたが、これが最近は楽しくもある。知らないことを知るというのは面白い。
とある精霊研究者
「どうせ旅をすることになるんだから、その隕石を見に行ってみるのも悪くないね」そう言った弟にハーフエルフの姉も頷いた。
この隕石に含まれた生命反応のある鉱石がハーフエルフの少年により解析され、後にエクスフィアと呼ばれるようになる。