ルミナリア
□月下の君を知る
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Y.C.998
キトルール草原
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「その話を聞いて以来、僕は先輩に弓の扱い方を教える事になって、逆に先輩には体術を教えてもらうようになってな」
夜になるとこっそりと寮を抜け出し、訓練場で先輩と特訓に明け暮れた。
「じゃあそうやって、一緒に訓練するうちにナマエちゃん先輩の事好きになったんだ?」
「ま、まあ、そういうことになるな」
そう言えば、イェルシィはそっか、と呟いた。
「けど、ナマエちゃん先輩が武器使わないのにそんな事情があったなんて知らなかったなぁ。素手でも戦えるのに色んな武器の事知っててすっごいなぁとは思ってたけど」
先程ナマエ先輩と会った時に、イェルシィくんはアドバイスを貰って良くなったと言っていたもんな。
「そんな理由があったんだね」
「ああ。だからそんな先輩に、僕が抱いてる想いを伝えるのダメな気がするんだ」
「そうかなぁ。アタシは真剣に騎士を目指してるナマエちゃん先輩だからこそ、マッキ先輩の想いにも真剣に答えてくれると思うけど」
「真剣に答えてくれるだろうから、ダメなんだ」
そんな過去からか、ナマエ先輩は"護る"という事に異常なまでに固執する。
一緒に任務に行った時も僕を含め後輩達を、絶対に自分より前に出させはしないし、敵戦力からの撤退時も必ずと言っていいほど先輩が殿を努める。先輩はそこを良くリゼット教官に注意されている。
「たとえ先輩に想いを告げたとして、だ。その答えがどちらであったとしても、先輩にとって必ず護らなければならない存在になってしまうんじゃないか…?」
思い当たる節があるのか、イェルシィは、あー…と呟いた。後輩である彼女もまた、ナマエにとっての庇護対象だからだ。
「そっかー。今でもナマエちゃん先輩過保護なのに、恋人になったら……。あー、でもそもそも、そんなことがあったんなら大切な人は作らなさそうだよね…」
だよね、と頷く。
「せめて僕が先輩より強ければなー」
そう。僕の同期であり我々ブレイズの筆頭であるリュシアンのように……。
「ナマエちゃん先輩より強くなったらかー。頑張れマッキ先輩!あたしが応援しちゃる〜!」
「え、あ、うん。ありがとう?」
「ってことで、今日の任務もチャキッと頑張ろー!」
そう言っていつも以上にやる気のイェルシィと共にマクシムは任務へと赴くのであった。
Y.C.998
イーディス騎士学校
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「疲れた……」
任務を終えてぐったりとした様子のマクシムは、学園内の寮へ戻る所だった。
『おつかれ〜』
すれ違った人にそう言われ、ああ、と返しながらその人の方へ顔を向けた。
「ナマエ先輩……!」
慌ててピシッと背筋を伸ばしたマクシムにナマエは小さな笑みを浮かべた。
『さっきイェルシィちゃんにもあったよ。大変だったみたいだねぇ』
同じ任務についていたイェルシィは、元気が有り余っていたのか、校長への報告を終えた後、先に戻るねー!と駆けて行っていた。
「い、いや。このマクシム・アセルマンにとってあの程度の任務、赤子の手をひねるよりも簡単でしたよ…!」
ハハハ、とマクシムは強気に笑ってみせた。
なにせ、先輩の前で情けない姿はみせられない。
『そう?あ、じゃあ今日も特訓しにくる?』
「え、」
正直今日は、任務で疲れたから寝たい。しかし、先輩より強くなりたいのに先輩が訓練してる合間に寝ていては追いつくことすらできないのではないか…?
それに、だ。ナマエ先輩が学校に戻ってきたのも久々で、次はいつ会えるかもわからない。
「行きます!」
『おっ、流石アセルマン。意欲的だね〜。じゃあまた夜にいつもの場所でね』
「はい!」
後でね、と手を振ってから立ち去る先輩を見届けて、はあ、とため息を吐く。
「頑張ろう……」
そう呟いてマクシムは約束の時までの間に少しでも体を休ませようと、急いで自室へ戻るのだった。