ルミナリア

□月下の君を知る
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Y.C.998
イーディス騎士学校
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夕食を取り、少しばかりの休息の後、マクシムは時間だと、寮を出た。

後輩として先輩よりも先に訓練場に着いて置かねば、と足早に学園内を進んでいると、中庭で、校舎から出てくるナマエ先輩を見つけた。

「せん、ぱ………」

声をかけようとしていたのにマクシムは口を閉じて、庭内に建てられた柱の後ろに隠れた。
先輩の後ろからリュシアンが出てきて、2人は何やら楽しそうに会話をしていた。

「ぐぬぬ……、何の話をしてるんだ」

ここからの距離では階段の上の2人の会話は聞こえない。

「……何をやっているんだ僕は……」

普通に声をかければ良かったのに、何故か隠れてしまった。


はあ、と一つため息を吐いて、二人を見ないようにしながら、マクシムは訓練場へと走って行った。




「おや?今のは……」

階段の上に居たリュシアンは、タッと駆けていくマクシムの姿を目に捉えた。

『どうしたの?』

「いえ、今、マクシムさんが……」

『ああ、もう時間だからね』

「いつもの、おふたりの秘密の特訓、ですね?」

リュシアンがにこやかにそう言えばナマエはキョトンという顔をした。

『知ってたの』

「ふふ。一年生の頃、マクシムさんが楽しそうに話していましたから。その時に、私にも参加するか?と声を掛けて頂きましたが、どうにも夜は冷えるので」

『ああ。リュシアンくんは体弱いもんね』

はい、とリュシアンは頷いた。

『じゃあ、しっかり暖かくして寝るんだよ』

「ええ。ありがとうございます。それでは、また」

バイバイと手を振ってリュシアンと別れたナマエは急いで訓練場へ向かった。


訓練場へ到着すれば、閉ざされた門の向こうに、目の前の的に矢を放った後、はあ、とため息を吐くマクシムの姿が見えた。
昔は登るこに手を貸していたのに、いつの間にやら1人で門を越えるようになってしまった後輩に僅かに寂しさを感じながらナマエは門の格子に足を引っ掛けよじ登って行く。


『マクシムくーん。お待たせっ』

そう声をかけながら、門の1番上からぴょん、と地面に飛び降りる。

「うわっ、びっくりした!?」

マクシムは、急に降りてきたナマエに驚いて叫んだ。

『ごめんね。邪魔しちゃったね』

「い、いえ、そんなことは!こほん。ところで、今日は荷物があるんですね」

ナマエが抱えて持ってきた袋をじっと見つめてマクシムは考える。

「新しい武器ですか?」

ナマエ先輩は、普段は素手で戦うが、何かがあった時の為に、他の武器での訓練も欠かさない。現に、僕が1年であった頃と比べれば、先輩の弓の腕前はずいぶんと上がっている。まあ、この僕が教えたのだから当然なのだけれど。

『ああ、今日のは違うよ。これは、後でね』

そう言ってナマエは訓練場の中にある武器庫の傍に荷物を置いた。

「後?」

未だ気になるのか荷物の方をじっと見つめて首をかしげるマクシムを見ながらナマエは小さく笑った。

『とりあえず訓練始めようか。マクシムくんもやってた途中だし、まずは弓術から……』

彼が先程打っていた的の方を見て、あれ、と今度はナマエの方が首を傾げた。
マクシムにしては珍しく、何本かの矢が的の中心から少しズレていた。
普段ならば、10本中10本、的のど真ん中に当てる技量のある彼が、だ。暗く的の見えずらい夜間でも今までそれくらいやってのけていたが……。

『……マクシムくん、今日調子悪い?』

「へ?……あ、いや、その、それはなんというかだな。えーと、少し考え事をしていて……」

モゴモゴとマクシムは口ごもる。
マクシムからすれば、リュシアンとナマエが何を話していたのか、そもそもなぜあんな時間に2人だけでいたのか気になって集中出来ていなかった、などと説明するわけにもいかなかった。

『…………うーん』

「ナマエ先輩?」

じっーと、見つめてきたナマエにマクシムの頬は自然と赤く染まっていく。


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