長編
□受難
2ページ/7ページ
「先日からルーク様の専属侍女として雇われました、ナナシと申します。わざわざお越し頂いたところ、大変申し訳ありませんが、今からルーク様はお風呂の時間なのです。お察し下さい」
そう言うと、彼女は真っ赤になって怒り出す。
「私はこの国の王女、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアなのよ!その私に向かって指図すると言うの!?」
これは少々まずいかもしれない。
だが、ルーク様は私の背中にしがみ付いて離れようとしない。
そのため、ナタリア様はなおさら不機嫌そうにこちらを見つめる。
私は、私は、怖がっているルーク様を守りたい。
「ナタリア様。私の今の主人はルーク様です。いくらあなたが国の王女であられても、私は雇われの身としてルーク様のお世話をしなければならないのです。どうしても、とおっしゃるのでしたら、この家の主人であるファブレ公爵様にアポイントメントをとってからお越しくださいますよう、お願いいたします」
そこまで言うと、ナタリア様は顔を真っ赤にして、私に近寄る。
_