ブック
□Act.15 女スパイと貴族子息と中世ヨーロッパ
1ページ/2ページ
注意:異世界・サスペンス
Act.15 女スパイと貴族子息と中世ヨーロッパ
「ルークさまぁ?今夜、空いていますかぁ?」
ひと気のない路地裏で、体をすり寄せる。
「なんだ?さびしいのか?」
一目見ただけで分かる、貴族の坊っちゃん、もとい、侯爵子息のルークは、いつものように女遊びをしていた。
「ルーク様との夜って、すごく情熱的ってきいたんですぅ」
「へぇ?いいぜ、近くのスイートルームでもいくか」
そう、ここまで計算済みである。
「ありがとうございますぅ!ナナシ、嬉しい!」
「着いて来いよ、ナナシ」
「はぁい」
さて、聞かせて貰おうかな。父の仇様。
私がハニートラップを仕掛ける理由は、ファブレ侯爵家によって殺された父の敵を取るためである。
私の実家は大手商会であり、父は商会の二代目、母は子爵家の長女だった。
販路を貴族につなげようと、母の人脈を生かしていた。
ところが、うちの商品と偽って売られたもので健康被害が生じ、それがきっかけで風評被害を受け、クレームの毎日に父は首つり自殺、母は精神を病んで倒れた。
唯一の兄弟、兄は父のあとを継いだものの、今の業績は右下がり、借金返済に右往左往している。
そして、私はその事件について調べた結果、背後にファブレ侯爵家が絡んでいるという情報を手に入れた。
だから私は、このファブレ侯爵家の放蕩息子、ルークさまに近寄り、真実を、あわよくばその命も奪おうと思ったのだった。
_