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□Act.14 病弱老女と短髪天使と病院
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注意:ルーク転生
Act.14 病弱老女と短髪天使と病院
「幻覚だと言われたよ」
そう口を開いた私は、やはり独り言を呟いているように見えるのだろうか。
「へぇ?新しい薬でも増やされるの?」
だが、聞こえてくる声は確かに、目の前の赤毛の天使からだ。
そう、私、ナナシは余命わずか。
もって一カ月といったところだろう。
家族の見舞いもほとんどなくなり、次にくるのは危篤の時か、という感じだった。
そんなある日だった。
「よぉ、ばあさん。死にそうだな?」
「……私は天使なんぞが出てくる宗教だったわけじゃないんだけどねぇ」
現れたのは、赤毛で翠の目を持つ若い男の天使だった。
「あれか、死の間際の妄想か。
ふふ、悪くないけど、ばあさん呼びはやめてほしいわ」
「ん、そうか。まあ、妄想じゃないけど……。
俺、ルークって言うんだ。よろしくな、ナナシ」
それは、心地いい夢のようであった。
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